豪アニメ会社が異例の“AI不使用”声明「ジブリの美しさは人間抜きに表現できない」

2025年3月30日、オーストラリアのアニメーション会社Glitch Productionsが、「私たちは作品の中で(人間の)アートの代わりにAIを使うことは決してない」との声明を発表した。
「ジブリ風」のAI画像を生成する「Ghiblification(ジブリフィケーション)」騒動を受けての声明とみられる。
Glitch Productionsの声明とその背景
今回の声明は、アニメーション業界全体がAIによる効率化やコスト削減に向かう中で異彩を放っている。特に同スタジオは、「スタジオジブリのような作品の美しさは、AIによっては表現できない」と明言しており、その決断の核心には人間特有の感性や文化的背景に根ざした表現力があると見られる。
現在、アニメ業界では背景画やキャラクターデザインの一部にAIを導入する動きが広がっており、制作現場のスピードアップが進められている。
だがその一方で、「感情を持たないAIが、本当の意味で心に響く作品を生み出せるのか」という根本的な疑問も拭えない。
声明を発表したスタジオは、「我々が目指すのは、視聴者の心に長く残る作品づくりだ」と語っており、ジブリ作品に通じる「物語の深み」や「人間らしさ」にこだわっている姿勢がうかがえる。
AIによる生成はデータの蓄積と統計的処理に基づくものであり、そこに創作者固有の体験や感性が入り込む余地は少ない。
そのため、スタジオ側は「人間の手による不完全さこそが作品に魂を与える」とも強調しており、このスタンスが国内外で議論を呼んでいる。
AIと人間の創造性の共存と今後の展望
AI技術の進化は、アニメーション制作における新たな可能性をもたらしている。
例えば、背景美術の自動生成やキャラクターの動きの補完など、作業の負担を軽減する役割を果たすことができる。これにより、クリエイターはより創造的な部分に集中できるようになるため、全体の制作効率が向上する可能性がある。
AIを活用しない選択は、短期的には作品の質を維持するかもしれないが、長期的には競争力を失うリスクも孕んでいる。
一方で、AIが人間の感性や創造性を完全に代替することは難しいと考えられる。
人間の手による作品は、感情や深い美しさを表現することができ、視聴者に強い印象を与える。特に、スタジオジブリの作品に見られるように、自然や文化を繊細に描写することは、AIには難しい領域である。
今後、アニメ業界ではAIと人間のクリエイティビティがどう折り合いをつけていくかが問われるだろう。完全な排除か、あるいは適切なバランスでの共存か。今回の“AI不使用宣言”は、その分岐点として象徴的な意味を持つと考えられる。