フィリピン政府、AI政策推進の専門家組織を設立へ 倫理とガバナンス強化を狙う

フィリピン政府は、AI政策を推進するための専門家組織を設立すると、2025年3月28日に発表した。国家イノベーション評議会(NIC)が主導し、AI技術の現状分析や政策提言が行われる見通しだ。
AIの倫理やガバナンス強化が目的とされており、国際的な基準の導入も視野に入れられている。
フィリピン、国家AI戦略の強化へ
フィリピンでは、AI技術の活用を推進するための政策整備が進んでいる。
2021年には「国家AIロードマップ」(※)が策定され、AIの研究開発や導入促進が重点課題として掲げられた。
さらに、2024年には「国家AI戦略ロードマップ2.0」が発表され、倫理・ガバナンスの強化が新たなテーマとして追加された。
こうした流れを受け、政府はAI政策の専門家組織を設立し、より具体的な戦略策定を行う方針を打ち出した。組織構成としては、「政府関係者」「学術界の専門家」「産業界のリーダー」などで構成される予定であり、いずれもフィリピンのAI政策形成において重要な役割を担う。
本プロジェクトでは特に、AIの倫理的な利用や規制の枠組みの策定が注目されている。
これはAI技術の発展がもたらす社会的影響を最小限に抑えつつ、経済成長を促進することが課題とされているためだ。
専門家組織は、他国の事例も参照しながら、フィリピンに適したガイドラインを策定する見通しである。
※国家AIロードマップ:フィリピン政府が策定したAI技術の発展戦略。2021年版では技術革新と経済成長を主軸とし、2024年版では倫理や規制の観点が強化された。
国際連携と今後の課題
フィリピン政府は、AI政策の策定にあたって国際的な連携も視野に入れている。特に、欧州連合(EU)やシンガポールなど、AI規制の整備が進んでいる国々との協力が期待される。
これにより、国際基準を取り入れた政策が形成される可能性も高まる見込みだ。
また、AI技術の発展に伴う社会的課題への対応も急務となっている。
たとえば、AIの導入が労働市場に与える影響や、データプライバシーの確保などが挙げられる。専門家組織は、これらの課題に対処するための具体的な提言を行い、持続可能なAI活用の枠組みを構築する役割を担うだろう。
今後、フィリピンのAI政策がどのように進化するのか、注目が集まっている。