デジタル庁、政府向け生成AIガイドライン案を公表　各府省にAI最高責任者を設置へ

デジタル庁は2025年3月28日、政府機関向けの生成AIガイドライン案を公表した。

行政の専門知識を学習させた専用AIの構築にも対応するなど、幅広い利用を促すことを想定している。

意見募集を経て、2025年5月ごろに最終決定と運用開始がされる見込みだ。

政府機関における生成AI導入とリスク管理の強化

デジタル庁が策定した生成AIガイドライン案は、政府機関における生成AIの適切な利用を促進するための指針となる。

生成AI技術は行政業務の効率化や公共サービスの向上に寄与する一方で、機密情報の流出や誤情報の生成といったリスクも伴う。このため、政府機関内での統括的な管理体制を構築する必要があると判断された。

ガイドラインの柱となるのは、各府省に「AI統括責任者（CAIO：Chief AI Officer）」を設置する点だ。CAIOは、生成AIの導入状況を把握し、リスク評価を行う役割を担う。
また、専門家による「先進的AI利活用アドバイザリーボード」を設置し、最新の技術動向や適切な活用方法に関する助言を得る仕組みも盛り込まれた。

加えて、生成AIの調達時には、機密情報の取り扱い、個人情報の学習の有無、業務の性質といった四つの観点からリスク分析を行うことが求められる。
この分析には、デジタル庁が提供する「高リスク判定シート」が活用される予定だ。
これにより、各府省は生成AIの導入に伴うリスクを適切に評価し、必要な対策を講じることができるようになる。

意見募集と国際動向を踏まえた今後の展望

本ガイドライン案に対する意見募集は、2025年3月28日から4月11日まで実施される。

意見は電子政府の総合窓口「e-Gov」を通じて受け付けられ、寄せられた意見を基にガイドラインの内容が最終決定される予定だ。運用開始は2025年5月ごろが見込まれる。

政府による生成AIの導入は、国際的な動向とも密接に関連している。特に、アメリカでは全省庁にAI最高責任者の設置が義務付けられ、欧州ではAI法（AI Act）の策定が進められている。
日本のガイドラインも、これらの動向を踏まえつつ、国際基準と整合性を持たせる形で策定されたとみられる。

生成AIの活用が進むことで、行政のデジタル化は加速し、業務効率の向上や新たなサービスの創出が期待される。

一方で、AIのリスクを適切に管理する体制が整わなければ、情報漏洩や誤情報拡散といった問題が発生する可能性もある。

今後、ガイドラインがどのように運用され、政府機関における生成AIの活用がどのように進展するかが注目される。