テザー社、南米農業大手アデコアグロへの出資率を70%に拡大へ

2025年3月27日、世界最大のステーブルコイン発行企業テザー社が、南米の大手農業企業アデコアグロへの出資率を現在の51%から約70%へ引き上げる計画を発表した。
この取引は1株あたり12.41ドルでの買収提案となり、発表を受けてアデコアグロの株価は市場前取引で7%以上上昇している。
テザー社、暗号資産から実物資産への投資多様化を加速
この買収は、テザー社が完全希薄化ベース(※)で少なくとも51%の株式を保有することを条件としている。
アデコアグロはアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイに事業を展開する、ルクセンブルクの農業系大企業で、時価総額は約11億2000万ドル(約1691億円)に達する。
同社は砂糖、エタノール、乳製品、農作物の生産を主力事業とし、保有する農地面積は210,400ヘクタールに及ぶ。
テザー社のCEOパオロ・アルドイノ氏によれば、この投資はビットコインや金の保有を補完する「安全な避難所」としての意味を持つという。
今回の買収については、経済の自由とレジリエンスを促進するインフラやビジネスを支援する取り組みの一環だと説明。
農業コモディティは伝統的にインフレヘッジとしての役割を持つことから、テザー社の資産分散戦略に合致すると見られる。
この買収提案はアデコアグロの成長を加速させる可能性があり、テザー社からの資金調達により事業拡大の機会が広がることが期待されている。
※完全希薄化ベース:ストックオプションや転換社債など、将来的に株式に転換される可能性のある全ての証券が株式に転換されたと仮定した場合の株式総数に基づく計算方法。
企業の実質的な所有権や支配権の評価において、より正確な指標となる。
暗号資産最大手の実物資産投資戦略が鮮明に
テザー社は農業分野以外にも投資を拡大しており、イタリアのメディア企業Be Waterの株式30.4%を1000万ユーロで取得したことが明らかになっている。
さらに、イタリアの名門サッカークラブ、ユベントスFCの少数株式取得も計画中だ。
これらの投資行動からは、テザー社が暗号資産市場以外の分野への投資を積極的に進めていることがうかがえる。
世界最大のステーブルコイン発行体が農業やスポーツなどの実物資産に大規模投資を行う動きは、暗号資産業界と従来型産業の境界が曖昧になりつつある証左かもしれない。
アデコアグロの株価はこの発表を受けて市場前取引で7%以上上昇し、11.95ドルに達した。
投資家がテザー社の参画をアデコアグロの将来性に対するポジティブな材料と捉えていることの現れと言えるだろう。
今後の取引完了に向けた動向や、テザー社による経営関与の度合いについても注目が集まることになるだろう。