東大とNEC、人に寄り添うAIロボットで次世代ネットワークの実証実験 安全支援と社会実装への第一歩

3月27日、東京大学とNECは、AIとロボットの高度な融合による新たな未来を見据え、次世代ネットワークの実証実験を開始したと発表した。
AIとロボットを組み合わせ、高齢者や子供連れなど移動時に支援を必要とする人々の安全な生活をサポートすることを目的としており、Beyond 5G時代の社会実装を視野に入れた取り組みの一環であると考えられている。
「 高齢者や子供連れに寄り添うロボット」社会課題に挑む次世代通信技術
今回の実験では、主に「ネットワークfor AI(NW for AI)」と呼ばれる次世代ネットワーク技術の有効性を検証する。
この技術は、ロボットに搭載されたカメラの映像をAIが分析し、通信環境に応じて映像品質をリアルタイムで調整するというものだ。
これにより、映像解析に必要な解像度を確保しつつ、通信帯域や電波強度に応じた柔軟なデータ制御が可能になる見込みだ。
AIの判断精度とロボットの動作安定性を両立させる試みである。
実験で使用されたロボットは、人を先導しながら荷物を運ぶ。
これは、各種センサーから得た情報をAIが解析し、ユーザーの行動を先読みして交差点などの危険を察知し、安全な移動をサポートするという仕組みにより成り立っている。
交差点などで混雑や危険を検知した場合には、所有者だけでなく、周囲の人々にも通知が行われる仕組みも試されており、個人支援を超えた安全インフラとしての機能が期待されている。
実用化へ向けた展望と課題
技術の成熟が進めば、高齢者や子供連れの安全な生活サポートに寄与することが期待される。特に高齢化が進む日本においては、こうした技術の進歩は急務であるだろう。
今後は、東京大学とNECの連携に加え、通信事業者や自治体、介護・医療関連企業との協業が進むことも想定される。Beyond 5Gの通信基盤と融合することで、より広域かつ高精度なロボット運用の実現性が高まるとみられている。
一方で、社会への実用に向けては、技術的信頼性の安定が重要になるだろう。
AIが人の動きや環境の変化をどの程度正確に先読みできるかは、依然として検証段階にあり、とくに屋外での複雑な状況や突発的な事象への対応には限界がある可能性も否定できない。
「人命に関わるような事故の発生は万が一にも起きてはならない」という前提をもとに安全性を確保するためには、運用前の十分な検証と慎重な導入が不可欠といえるだろう。
AIとロボットの融合が、単なる「先端技術」にとどまらず、実用的な社会ソリューションとして根づくためには、段階的な検証と制度面を含めた調整が引き続き求められるだろう。
東京大学とNECは、Beyond 5Gの社会実装に向けた取り組みを継続しており、今後は他の通信事業者や企業などとの連携も視野に入れているという。
今後の社会実装に向け、技術の進展と現場での活用がどのように結びついていくのか、注目される。