スペースデータ、バーチャルISSシミュレーターを無償公開 宇宙開発の民主化へ

スペースデータは2025年3月27日、国際宇宙ステーション(ISS)を高精度に再現した宇宙ロボット開発向けシミュレーター「バーチャル国際宇宙ステーション(ISS)」を無償公開した。GitHubを通じて2025年8月31日まで配布される。
高精度なISS環境を再現
スペースデータが公開するバーチャルISSシミュレーターは、実際のISS環境を忠実に再現した高精度なシステムである。JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同開発により、船内環境データを活用したシミュレーションが可能となり、研究開発や教育用途に大きな価値をもたらす。
本シミュレーターは、JAXAの官民共創プログラム「J-SPARC」の枠組みのもとで開発された。
ISS「きぼう」日本実験棟の船内環境データを基に構築されており、温度、湿度、風量、照度といったリアルタイムの環境データが反映される。
さらに、本シミュレーターにはJAXAが開発した宇宙ロボット「Int-Ball2」の高精度モデルが搭載されている。実機と同様のセンサーおよび駆動系のソフトウェアインターフェースが再現されており、開発者は現実に即したロボットの動作検証を行うことができる。
シミュレーターは、地上ロボット開発で広く利用されているRobot Operating System(ROS ※)に対応している。これにより、既存の地上ロボット技術を宇宙環境に適用しやすい設計となっており、研究者や開発者は自身のシステムを容易に適応させることができる。
また、シミュレーターのプラットフォームにはNVIDIAのIsaac Simが採用されている。Isaac Simは、AIおよびロボティクスの開発環境として広く活用されており、仮想空間内での試験運用が可能だ。これにより、宇宙環境におけるAI技術の適用が加速し、新たなイノベーションの創出が期待される。
※Robot Operating System(ROS):ロボット制御のためのオープンソースミドルウェア。ロボットのセンサー情報処理やモーションプランニングを簡易化し、研究者や開発者の負担を軽減する役割を持つ。
開発者への新たな機会
スペースデータは、このシミュレーターの無償公開によって、世界中の開発者、研究機関、教育機関、学生による宇宙開発への参入を促し、技術実証のハードルを下げることを目指している。さらに、地上のロボット技術との交流を促進し、宇宙技術の発展につなげたい考えだ。
シミュレーターの無償公開は、宇宙開発の民主化に向けた大きな一歩だ。
JAXAとの共同開発により、ISS内の温度・湿度・風量・照度といったリアルな環境データが反映される点は、他に類を見ない精度を誇る。
これにより、教育機関やスタートアップであっても実機に近い条件下でシミュレーションが行えるため、研究・開発コストの大幅な削減が期待できる。特に、JAXAの宇宙ロボット「Int-Ball2」まで高精度に再現されている点は、ロボティクス分野における技術検証の幅を大きく広げるはずだ。
さらに、ROSやNVIDIA Isaac Simとの互換性は、地上ロボット分野の既存技術をそのまま宇宙開発に応用できるという柔軟性を生む。技術者にとって、知見の再利用が可能になるという点も大きな利点である。