中国のオンライン旅行会社が生成AI導入を加速 パーソナライズ需要に対応し競争力強化へ

中国のオンライン旅行会社(OTA)(※)が生成AIを活用したサービスの導入を加速していると、2025年3月25日に報道された。
本件は、旅行者の多様なニーズに対応し、競争優位を確保するための動きとして注目される。
AI活用によるパーソナライズと効率化で顧客満足度の向上を狙う動きが活発化
近年、旅行者の嗜好は多様化しており、従来の画一的な旅行パッケージでは満足されにくくなっている。中国のOTA各社はこの変化に対応する手段として、生成AIの活用を本格化させている。
携程集団(トリップドットコム・グループ)は、23年7月にAIによる旅行プランの提案システムを導入した。同社の決算報告では、自主開発した生成AI「程心」を活用し旅行プランの対応をしているという。
また、今月から同程旅行(トンチョン・トラベル)は、「程心」に中国の新興企業DeepSeek(ディープシーク)の生成AIモデルを取り入れ、進化させた。
今までは利用者の漠然としたプランには回答ができなかったが、これにより、旅行プランからホテルや航空券などの予約をまとめて行うことが可能となった。
さらに、阿里巴巴集団(アリババグループ)系の中国の旅行サイト「飛猪(フリギー)」もディープシークを使った「AI行程助手」を採用した。こちらは、数秒で旅行プランを提案できるという。
旅行業界全体への波及と今後の展望
現在進行中のAI導入の波は、今後さらに広がっていくと予想される。
中国において先行する携程集団(トリップドットコム・グループ)や同程旅行(トンチョン・トラベル)のような大手企業が先陣を切ったことで、他の中小OTAにも同様の取り組みが波及する可能性は高い。
特に、中国国内の多様な旅行需要と広大なマーケットを背景に、ローカライズされたAIの進化が加速することが見込まれる。
将来的には、単なる旅行プラン提案にとどまらず、ユーザーの感情や体験履歴をもとにした「感性ベース」の提案機能や、旅行中のリアルタイム対応など、AI活用の範囲はさらに拡大するだろう。
また、生成AIが音声や映像コンテンツと連動することで、より没入感のある旅行体験の実現も期待される。
ただし、技術進化と同時に、AIの信頼性と倫理的利用が問われる局面も増えていくだろう。
OTA各社は、利便性の追求だけでなく、利用者にとって安心できるサービス設計と情報管理体制の両立を図る必要がある。
AI競争の真価は、単なる技術力よりも、いかに「信頼される体験」を提供できるかにかかっているといえる。
※OTA:オンライン トラベル エージェントの略で、インターネットのみで取引を行う旅行会社