NTTなど3社、「6G」時代の高速無線通信で世界記録 毎秒140ギガビット伝送に成功

2025年3月24日、日本のNTT、NTTドコモ、NECの3社が次世代通信規格「6G」に向けた高速無線通信の実証実験に成功したと発表した。実験では、ミリ波帯を活用し、双方向で合計毎秒140ギガビットという世界最高速のデータ伝送を実現した。
OAMモード多重伝送がもたらすブレイクスルー 6G時代の鍵となる技術の詳細
今回の実証実験は、日本国内の通信大手3社によって行われ、将来的な6Gネットワークの実現に向けた大きな一歩となった。
実験では、71〜86ギガヘルツのミリ波帯を使用。これは高周波数で大容量データの伝送に適した帯域であり、直進性が高い反面、障害物の影響を受けやすいという特性も持つ。そこに対して、各社の技術的工夫が突破口となった。
実験の中核となったのは「OAMモード多重伝送」と呼ばれる技術である。これは電磁波の「軌道角運動量(OAM ※1)」を利用するもので、複数のOAMモードが互いに干渉しない性質を活かし、複数のデータを同時かつ独立に伝送することが可能になる。
NECが開発した送受信装置によって、片方向で最大毎秒70ギガビットのリアルタイム伝送に成功した。
実験では、22.5メートルの距離で毎秒139.2ギガビット、45メートルでも毎秒104ギガビットの伝送速度を達成。さらに、ドコモは壁などの反射を用いたシナリオも検証し、直進が難しい環境における応用可能性も確認された。
これらの成果は、従来の通信方式では困難だったバックホール回線(※2)への無線適用を現実のものに近づけている。
※1 OAM(軌道角運動量):電磁波の波面が螺旋状にねじれている構造を持ち、異なる回転モードが互いに干渉しない特性を持つ。これを利用することで多重伝送が可能になる。
※2 バックホール回線:通信ネットワークにおいて、基地局などの末端装置と中核ネットワークをつなぐ中間の通信経路。安定かつ大容量の通信が求められる。
2030年代後半の6G普及へ 社会を変える技術革新とその課題とは
今回の成果はあくまで研究段階の実験であり、商用化には複数の課題が残されている。
特にミリ波以上の高周波数帯では、距離や障害物による減衰が顕著であるため、伝送の安定性や長距離化への対策が必要になる。
また、OAMモードのような高度な技術を現場レベルで展開するには、コストや設置性の問題も含めたトータルな技術革新が求められるだろう。
一方で、6Gの実用化によって社会が得る恩恵は非常に大きいと思われる。
たとえば、災害発生時における臨時の通信ネットワーク構築や、移動型基地局への展開により、迅速な情報伝達が可能になる。
さらに、VRやAR、遠隔医療、IoT高度化といった新たな分野において、膨大な通信量をスムーズに処理する基盤にもなり得るだろう。
2030年代後半を目標に、各国が6Gの開発競争を加速させている中では、今回の日本企業による成果は世界的にも注目度が高いだろう。
技術的ハードルは依然として高いものの、今後の研究と社会実装により、通信インフラはさらなる進化を遂げる可能性があると言える。