世界初の側宙成功　中国Unitree G1の人型ロボットが示した運動性能の高さ

中国のロボット企業Unitree Roboticsが2025年3月19日に公開した人型ロボット「Unitree G1」が、世界で初めて側宙（側方宙返り）に成功し、話題を集めた。手を床に触れずに側転を行い、着地後も安定した姿勢を維持するという高度な運動能力が注目を集めている。

模倣学習と深層強化学習を融合させた革新的技術

Unitree G1が実現した側宙は、模倣学習と深層強化学習という二つのAI技術を組み合わせたアプローチによって達成された。上半身の動作には人間の動きを模倣する模倣学習（※1）を、下半身には自律的な運動能力を向上させる深層強化学習（※2）を適用しており、この融合が複雑なアクロバティック動作を可能にしたのだ。

特に、側宙のような不安定な動作においても、着地後にバランスを崩さないという高度な安定性は注目を集めた。1年前には、Unitree Roboticsは「Unitree H1」による後方宙返り（バク宙）を成功させていたが、今回の側宙はさらに難易度の高い動きであり、ロボット工学における技術革新の加速を象徴している。

価格面においても注目すべき点がある。
Unitree G1のエントリーモデルは約1万6000米ドル（約240万円）で販売されており、同等の機能を持つ競合製品と比較して大幅に低価格化されている。
この価格帯は研究機関や教育機関だけでなく、個人の愛好家にも手が届く範囲であり、人型ロボット市場の裾野拡大に寄与する可能性が高い。

※1 模倣学習：人間など他者の動きをロボットが観察し再現するAI技術。動作データを収集・分析することで、自然な動きの模倣を可能にする。

※2 深層強化学習：ロボットが試行錯誤を繰り返しながら最適な動作を自ら学習するAI技術。成功した行動に報酬を与える仕組みにより、複雑な動作を獲得していく。

SNSで話題沸騰

Unitree G1の側宙成功を収めた映像はSNSやYouTubeで反響を呼んでおり、特にカンフーアクションを披露した動画は100万回以上の再生回数を記録した。単なる技術的好奇心を超え、実用的な人型ロボットへの期待の高まりを反映しているといえよう。

Unitree Roboticsは今後、家庭用サービスロボットや産業用支援ロボットなど、実用分野への応用を目指している。しかし、現時点では耐久性や連続稼働時間などの課題も残されており、実用化に向けたさらなる技術改良が必要とされる。それでも、側宙という高度な運動能力の実現は、将来的な活用範囲の広がりを強く示唆している。

Unitree G1の成功は、中国のロボット技術が世界最先端レベルに達していることを証明するものでもある。米国のBoston DynamicsやテスラのOptimusなど、先行する人型ロボット開発との競争が今後さらに激化すると予想される。特に中国政府がロボット産業を次世代の重点分野と位置づけていることから、国家的支援も相まって技術革新が加速する見通しだ。

人型ロボットの進化は、高齢化社会における労働力不足の解消や、災害救助など危険な環境での作業など、さまざまな社会課題の解決につながる可能性を秘めている。
Unitree G1の側宙成功は、AIを利用した運動能力の向上という面で、注目に値すると言えるだろう。