NVIDIA、世界初のヒューマノイドロボット用オープン基盤モデル「Isaac GR00T N1」を発表

NVIDIAは2025年3月19日、ヒューマノイドロボット向けのオープン基盤モデル「Isaac GR00T N1」を発表した。汎用ヒューマノイドロボットのためのフルカスタマイズ可能な基盤として設計された世界初の試みであり、ロボットの知能と動作の両面で大きな進化をもたらすものとされている。
Isaac GR00T N1の特徴
Isaac GR00T N1の最大の特徴は、デュアルシステムアーキテクチャの採用にある。
これは、人間の認知プロセスを模倣するもので、「System 1」と「System 2」の二層構造によって構成されている。
System 1は、反射的かつ直感的な動作を担い、即時的な判断が求められる作業に適応する。System 2は、環境や指示に基づいて論理的に思考し、複雑なタスクを計画する機能を持つ。
これにより、GR00T N1は単なる動作の自動化にとどまらず、状況に応じた適応能力を備えたロボットの基盤となる。
具体的なユースケースとしては、物流現場でのマテリアルハンドリングや包装作業、品質検査などが挙げられる。
また、視覚言語モデル(VLM※)を活用することで、ロボットは周囲の状況を認識し、適切な行動を計画・実行できる。
たとえば、家庭内での整頓作業を指示された場合、System 2が最適な行動パターンを決定し、System 1がスムーズな動作へと変換する仕組みだ。このような構造により、従来のロボットには難しかったタスクの一般化が可能になる。
GTC 2025では、GR00T N1によりトレーニングされたヒューマノイドロボットが家庭用の整頓作業を自律的に行うデモが披露された。ロボットが指示を受けずに物を整理する様子を披露することで、実用化への道筋を明確にした。
※視覚言語モデル(VLM):画像や映像データとテキスト情報を統合し、文脈に応じた理解・推論を可能にするAI技術。
ヒューマノイドロボットの今後を考察
Isaac GR00T N1の登場は、ヒューマノイドロボットの進化を加速させる契機となるだろう。
短期的には、産業分野での自動化の推進が進むと考えられる。物流や製造業において、人間の動きを模倣しながら効率的に作業をこなせるロボットの導入が拡大する可能性が高い。
中長期的には、家庭やサービス業への普及が鍵を握るだろう。GTC 2025で披露された家庭内整頓のデモンストレーションは、実用化の方向性を示唆しており、今後は介護や接客といった分野への適用も進むと見られる。
一方で、AIとロボット倫理の課題も重要なテーマとなるだろう。
ロボットが人間と共存する社会では、意思決定の透明性や誤作動リスクへの対応が不可欠だ。NVIDIAはオープン基盤としての強みを活かし、研究機関や企業との連携を深めることで、より安全かつ信頼性の高いシステムの構築を進めると予想される。