ルトニック商務長官、米国製半導体の中国流出防止を強調

米国のハワード・ルトニック商務長官は2025年3月18日、産業安全保障局(BIS)の会議で、中国への米国製半導体の流出を防ぐ対策強化を企業や外国政府に要請した。
国家安全保障の観点から、特に中国企業による不正使用問題に言及し、規制強化の方針を明らかにした。
中国企業の不正使用問題と台湾依存のリスクを警告
ルトニック商務長官は会議で、中国企業「ディープシーク」による米国製半導体の不正使用している疑惑を具体例として挙げた。「金のためにわが国の半導体を中国に横流しした者がいる」と指摘し、流出が米国の技術的優位性を脅かしていると警告している。
この発言は、中国の軍事技術や生成AI開発における米国技術の活用に対する強い懸念を反映したものだ。
またルトニック氏は、台湾からの半導体供給が途絶えるリスクについても言及した。
半導体が途切れれば、自動車産業をはじめとする幅広い製造業に深刻な影響が及ぶ可能性があるという。この懸念は、地政学的リスクが米国の産業基盤に直結するという認識に基づいたものといえるだろう。
トランプ政権は、貿易取引の一環として輸出規制を強化する計画を進めている。
先端技術や半導体の中国流出を阻止することを主眼としており、米国の安全保障戦略における重要施策として位置づけられている。トランプ政権は1月の発足以来、対中技術流出への警戒を強めてきた。
国内生産強化を推進
長官はまた、ドローン(無人機)の製造やデータセンター建設の必要性についても言及した。トランプ政権は発足直後から、AIのための大規模なデータセンターを構築する計画である「StarGate」を発表するなど、自国のAI領域における優位性を維持する動きをアピールしてきた。AIやロボットのインフラ整備を重視する姿勢が、改めて強調された形である。
中国のAI企業、およびサービスである「ディープシーク」は、低性能の半導体で比較的高性能なAIチャットサービスを実現させたことで話題を集めた。中国からアメリカへの半導体の輸出は、トランプ以前の政権でも制限されており、中国では輸出用の低性能なチップであるH800を使わざるを得なかった。そのような状況の中で高い性能を実現できたことが、インパクトにつながったのである。
DeepSeekは簡易版チップを使用したと主張しており、半導体の不正利用があったかどうかは不明だ。ただ、ルトニック氏が主張するようにチップの横流しによって性能を確保していたとするならば、今回のような引き締めはアメリカのAI分野における競争力を確保することにつながるだろう。
現トランプ政権は中国への警戒感を露わにしており、技術方面でも、今回のような引き締めの動きは継続していくものと思われる。