キリンビール、AI技術で桜を守る新サービス「桜AIカメラ」を発表

2025年3月17日、キリンビールは新たなウェブサービス「桜AIカメラ」を公開した。このサービスはスマートフォンで撮影した桜の画像をAIが解析し、健康状態や推定樹齢を判定するもので、桜の保全活動を支援することを目的としている。

AI技術を活用した桜の健康診断と社会的背景

「桜AIカメラ」はユーザーがスマートフォンで桜の写真を撮影し、専用サイトにアップロードするだけで、AIが桜の健康状態を5段階で評価し推定樹齢を算出するサービスである。このサービスは無料で提供され、誰でも利用可能である。

このサービスの開発背景には日本の桜の高齢化問題がある。戦後の復興期に全国各地で植えられた多くの桜が現在樹齢60～70年を迎え、一斉に高齢化が進行している。
一般的に桜は樹齢40年を過ぎると衰え始め、60年を超えると伐採や植え替えが必要になることが多い。
しかし人手や予算の不足により十分な管理が行き届かず、桜の衰弱化が進行している地域も少なくない。

さらに気候変動による影響も深刻である。冬の暖冬化により桜の休眠解除システム（植物が冬の低温期を経て、春に再び成長を開始するための生理的なメカニズム）が狂い、正常に開花しなかったり花付きが悪くなったりするなどの問題が報告されている。
実際に九州や四国の一部地域では、花見の対象にならないほど花付きが悪い桜が出始めており、その割合は年々増加している。

 自治体との連携とキリンビールの社会貢献活動

「桜AIカメラ」で収集されたデータは位置情報とともにデータベース上に集積され、自治体専用ページを通じて桜保全の担当者や樹木医（樹木の診断や治療を専門とする技術者）に共有される。
これにより桜の状態に合わせた適切なメンテナンスや計画的な植え替えなど、桜を守るための活動に役立てられる。

キリンビールは昨年より日本の風物詩を守る活動「晴れ風ACTION」を展開しており、「桜AIカメラ」はその一環として開発された。同社はこれまでにも桜や花火の保全活動に対して売上の一部を寄付するなどの社会貢献活動を行ってきた。2024年には全国の自治体や管理者と連携し、桜の植樹や保全活動に寄付を行っている。

今後は桜の保全活動をさらに拡充し、全国の桜の健康状態を把握するためのデータベースを構築することが目指されている。
また桜の保全活動の重要性を広めるための啓発活動も計画されており、持続可能な桜の保全活動が期待される。

桜AIカメラ