金融庁、暗号資産規制改正法案を国会へ提出 ステーブルコインの運用ルールが明確に

2023年3月7日、金融庁は資金決済に関する法律の一部を改正する法律案を国会に提出したと発表した。本改正案は、暗号資産およびステーブルコインに関する規制の強化を目的としている。
暗号資産市場の透明性向上を目的とした規制強化
金融庁が国会に提出した改正法案は、暗号資産交換業者に対する「資産の国内保有命令制度」の導入だ。これは、業者が破綻した際に顧客資産の国外流出を防ぐことを目的としている。
現行制度では、暗号資産の保管場所に関する明確な規制がないため、海外に保有された資産が消失するリスクが指摘されていた。
新たな規制により、国内での管理が義務付けられ、安全性が向上する見通しだ。
また、改正法案では「信託型ステーブルコイン(※)」の運用ルールが明確化される。ステーブルコインは、暗号資産市場において価格安定性を持つ決済手段として注目されており、裏付け資産の透明性が求められている。
新たな規制では、発行額の50%を上限に、満期が3カ月以内の日米国債や中途解約可能な定期預金での運用が認められる。これにより、価格の安定性を確保しながら、発行体のリスク管理が強化される。
さらに、暗号資産の取引を媒介する事業者向けに「仲介業」の枠組みが新設される。現行の制度では、取引所と直接契約を結ばない仲介業者が法律上の明確な位置づけを持たず、適用される規制が不明確であった。
今回の法改正により、仲介業者には「過不足のない規制」が適用され、業務運営が容易になると考えられる。
金融商品取引法への移行提言と業界への影響
前日の6日、自民党のWeb3ワーキンググループは、暗号資産の規制を金融商品取引法に移行する提言を公表した。
現在、暗号資産の多くは資金決済法の枠組みで取り扱われているが、投資商品の一種としての性質も強いため、より厳格なルールが求められている。
この提言が実現すれば、証券市場と同様の監視体制が導入され、投資家保護が一層強化される可能性がある。
本改正法案の成立により、暗号資産市場の透明性向上が期待される一方で、業界には新たな課題も生じる。特に、仲介業の新設により、事業者は登録手続きやコンプライアンス体制の整備を求められる。
さらに、資産の国内保有義務により、一部の海外取引所が日本市場から撤退する可能性も指摘されている。
一方で、国内での健全な市場形成が進むことで、暗号資産への信頼が高まり、投資の拡大が見込まれる。
今後の焦点は、本法案が国会でどのように審議され、具体的な施行スケジュールがどのように決定されるかにある。
施行後の市場動向についても引き続き注視する必要があるだろう。
※信託型ステーブルコイン:暗号資産の一種で、価値を一定に保つために法定通貨や債券などを担保とし、信託によって運用される仕組み。
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