Amazon、プライムビデオにAI吹き替え機能を追加 視聴者の多言語対応が加速

米Amazonは2025年3月5日(現地時間)、プライムビデオにAIによる吹き替え機能を追加すると発表した。この機能により、英語およびラテンアメリカスペイン語の吹き替えが提供される。まずは12本の映画やシリーズが対象となり、視聴者の利便性が向上する見通しだ。AIを活用した音声ローカリゼーション技術が、ストリーミング業界の標準となる可能性もある。
AmazonのAI吹き替えがもたらす変化
Amazonの新機能は、コンテンツの多言語対応を強化し、視聴者の選択肢を広げることを目的としている。AIによる吹き替えは、従来の手法に比べて迅速かつコストを抑えたローカリゼーションを可能にする。
今回の導入では、2003年公開のスペインのアニメーション映画「El Cid: La Leyenda」、2016年公開のアルゼンチン映画「Mi Mama Lora」、2019年公開の米映画「Long Lost」などの作品が選ばれている。
これらの作品はいずれも、これまで吹き替えが提供されていなかった。しかし、今回の対応により、字幕なしでも作品を楽しめるようになり、視聴者の利便性が向上する。
技術面では、AIによる音声合成技術とローカリゼーション(※)専門家の監修を組み合わせた「ハイブリッドアプローチ」が採用されている。
この手法により、機械翻訳の精度を補完し、より自然な吹き替えを実現する狙いがある。AI技術が進化するにつれ、対応言語の拡大も期待されると思われる。
※ローカリゼーション:特定の言語や文化に適した翻訳・編集を行い、視聴者に違和感なくコンテンツを提供するプロセスのこと。音声や字幕だけでなく、文化的背景の調整も含まれる。
ストリーミング業界におけるAI活用の動向
ストリーミング業界では、AIを活用したローカリゼーション技術の導入が加速している。YouTubeは2023年にAIを用いた多言語音声翻訳機能を発表し、クリエイターが簡単に異なる言語の音声トラックを追加できるように進めている。
また、Meta(旧Facebook)も、動画コンテンツ向けにAI自動翻訳技術を開発しており、多国籍市場への展開を広げている。
AmazonのAI吹き替え機能は、こうした競争の中でプライムビデオの優位性を確立するための一手なのではないだろうか。
今後、対応言語が増えれば、より多くの国の視聴者がコンテンツを楽しめるようになると予想されている。AIによる音声合成技術が成熟するにつれ、業界全体での活用がさらに広がるだろう。