LAタイムズ、記事の政治的偏りを分析して表示するAIを導入 記者からは反発の声

2025年3月3日、米紙ロサンゼルス・タイムズ(LAタイムズ)は、同紙デジタル版にAI機能「Insights」を導入した。これは記事の政治的偏りを分析し、読者に可視化する試みである。一方で、記者の間ではAIの信頼性や報道への影響を懸念する声が挙がっている。
偏り分析と透明性向上の狙い
LAタイムズの「Insights」機能は、AIを使って記事内容を分析し、その政治的立場を識別するものだ。具体的には、意見や主観的な視点を含む「Voices」ラベルが付与された記事に対し、AIが「保守的」「リベラル」などの傾向を判定する。
さらに、一部の「Voices」記事には、AIが生成した異なる視点の記事を併せて提示する機能も搭載されている。たとえば、特定の政治的立場に寄った記事には、対照的な視点の記事を推奨し、読者の多角的な理解を促すことを目的としている。
導入の背景には、近年の米国における政治的分断の深刻化がある。
SNSの発展により、ユーザーは自らの意見に近い情報のみを選択しがちになり、多様な考え方を受け入れにくくなっている。また、報道機関に対しても「偏向報道」との批判が強まり、メディアの信頼回復が喫緊の課題となっていた。
こうした状況を受け、LAタイムズはAIによる客観的な分析を活用することで、公平性の確保を図ろうとしている。AIが記事の政治的傾向を可視化し、異なる視点を提示することで、読者にバランスの取れた情報を提供し、健全な議論を促す狙いがある。
記者の反発と今後の課題
AIを活用したメディア分析の流れは、今後も拡大すると考えられる。
公平性の確保を強く求められる中で、大手メディアがAIによる補助的な評価システムを導入した本件は、一つの標準となるだろう。
メディア不信が高まるなか、AIによる客観的な分析が信頼回復の一助となる可能性もある。
一方で、この新機能に対しては、記者やメディア関係者から反発の声も強い。特に、AIが独自の判断で記事を分類し、その過程が人間のチェックを受けない点が問題視されている。LAタイムズの労働組合「LA Times Guild」のマット・ハミルトン副会長は、「AIによる分析が報道の信頼性向上につながるとは考えにくい」と指摘した。
また、AIの判断が誤解を招く可能性も懸念されている。
実際に、一部の分析結果では、歴史的な事実を誤った文脈で解釈するケースが確認されており、これが読者に誤った印象を与えるリスクが指摘されている。
AIのアルゴリズムは、膨大なデータをもとに学習するものの、文脈や社会的背景を完全に理解できるわけではない。
今後の課題としては、AIが報道の補助ツールとしてどこまで機能するのか、またその範囲をどのように定義するかが重要になるだろう。
記者の役割が変化する中で、AIとどのように共存し、協力していくのかが今後のメディアの未来を左右することになるだろう。