マイクロソフト、「Edge」に新たな3つのAI機能を追加 PDF翻訳や業務効率向上を実現

マイクロソフトは2025年5月19日(米国時間)、年次開発者会議「Build 2025」にて、同社ブラウザー「Microsoft Edge」に新たに追加される3つのAI機能を発表した。
PDFの全体翻訳や業務支援エージェント、不適切サイトの自動ブロック機能が含まれる。
業務を支えるEdgeの進化
マイクロソフトは、Edgeに3つのAI機能を導入することで、日々の業務をよりスマートに支援する体制を整えつつある。
1つ目は、PDFファイルの全体翻訳機能だ。従来は手動でテキストを選択する必要があったが、6月からはファイル全体を一括翻訳できるようになる。Edgeが自動で言語を判別し、翻訳後のPDFを即座に表示する。Canaryビルド(※1)では既に利用可能で、70以上の言語に対応する。
2つ目は、「Microsoft 365 Copilot」にエージェント機能を追加するものだ。営業支援や顧客対応の自動化に対応し、見込み客の分析や応対記録の要約まで行う。6月上旬より、Edge for Businessのサイドバーから「Copilot Chat」として利用できる。
3つ目は、AIによる「ウェブコンテンツフィルタリング」だ。不適切なサイトへのアクセスを防ぐ仕組みで、教育機関や中小企業のIT管理者を想定して設計されている。管理者は日次更新のカテゴリリストから選択するだけで、ポルノや詐欺、マルウェアなどの危険サイトを自動で遮断可能だ。
この機能は、Microsoft 365管理センターでの設定とPower BI(※2)による効果の可視化にも対応しており、Intuneを通じてWindows 10/11端末に配信できる。EducationおよびBusiness Premiumライセンス保有者には無償提供される。
業務効率と管理コスト削減 導入促進の鍵は現場の運用定着
Edgeの新機能群は、業務の自動化とセキュリティ強化を同時に実現するツールとして注目される。
特にCopilotエージェントによる営業支援は、データ活用に不慣れな中小企業に即効性のある変革となりうる。ブラウザー内に機能が統合されていることで、習熟のハードルも下がる。
PDF翻訳の高度化は、取説や契約書など多言語文書の処理効率を高め、グローバル展開する企業の業務時間を短縮できる。
セキュリティ分野では、AIによるフィルタリングが、従来の手動リスト運用の負荷を軽減する点で画期的だ。教育現場など技術者不在の環境でも導入・維持が容易なのも魅力である。
ただし、実運用では「翻訳の精度」や「業務理解度」などの課題も残る。Microsoftがプレビュー段階でのフィードバックをもとにどこまで精度を高められるかが普及のカギとなるだろう。
今回の機能統合は、Google Chromeなど他ブラウザーとの差別化を図る狙いもあると見られる。業務特化型ブラウザーとしての立ち位置を明確にし、Microsoftは生成AIとブラウジングの融合をさらに進めるだろう。
※1 Canaryビルド:ソフトウェアの開発段階における初期のテスト版であり、新機能が実装される最初のチャネル。一般公開前にバグ検出などの目的で利用される。
※2 Power BI:マイクロソフトが提供するビジネスインテリジェンスツール。企業の各種データを可視化し、意思決定を支援する役割を果たす。