非営利団体NODE、「CryptoPunks」のIP取得 NFTとアートの境界に新たな地平

2025年5月13日、米国の非営利団体「インフィニットノード財団(NODE)」が、NFTの先駆的作品「CryptoPunks(クリプトパンクス)」の知的財産権(IP)をYuga Labsから取得したと発表した。
「所有ではなく解放」 NODEが描くCryptoPunksの新たな役割
CryptoPunksは、2017年にLarva Labsのマット・ホール氏とジョン・ワトキンソン氏によって制作された、アルゴリズムによって自動生成された1万点のピクセルアートで構成されるNFT(※1)コレクションだ。
2022年3月にLarva LabsからYuga LabsにIPが移管されていたが、今回さらに、非営利団体であるNODEへと譲渡されたかたちとなる。
NODEは今回の取得を通じて、CryptoPunksを単なる資産やブランドではなく、「公共財」として再定義しようとしていると考えられる。
同財団はCryptoPunksのIP取得により、企業的な制約・摩擦から作品を解き放つことで、分散型・コミュニティ主導の未来においてコレクションの精神を発展させていくとした。これを「所有ではなく解放」と表現している。
NODEは今回のIP取得に際し、アドバイザリーボードを設置したという。このアドバイザリーボードの共同議長はLarva Labs創業者の両氏が務め、さらにYuga Labsの共同創業者ワイリー・アロノウ氏や、NFTプロジェクト「Art Blocks」創業者のエリック・カルデロン氏もアドバイザリーボートに参加するとのことだ。
財団は今後、カリフォルニア州パロアルトに常設展示スペースを開設し、CryptoPunksの全1万点を網羅的に紹介する展覧会も計画している。
さらに、約36億円規模の基金を設立し、デジタルアート支援に資金を投じる方針である。
Web3アート市場に与える波紋 商業化と文化的価値の分岐点
NODEによるIP取得は、NFTが投機対象として消費される状況へのカウンターとしても機能し得るだろう。
アートを「売るため」ではなく、「伝えるため」に活用するという価値観が、これまでの市場の論理に一石を投じていると考えられる。とりわけ、CryptoPunksのように歴史的文脈を持つコレクションが、非営利団体の手に委ねられた意義は大きい。
その一方で、NFT市場においては、IPの商業利用によるブランド展開やマーチャンダイジングが主要な収益源となってきた経緯があるとみられる。NODEの姿勢は、それらの文脈と一線を画すものだが、収益モデルの構築や運営の持続性については今後の課題となり得るだろう。
ただし、DAOやWeb3(※2)的な価値観を重視する層にとっては、今回の動きは歓迎される傾向にあると考えられる。
デジタルアートの真正性や評価制度のあり方を再考するうえでも、NODEの挑戦は今後の指標となる可能性がある。「市場原理と文化的意義のバランスをどう取るか」その問いに対する一つの回答が、ここにありそうだ。
※1 NFT(ノン・ファンジブル・トークン):ブロックチェーン上で発行される唯一無二のデジタル資産。改ざんが困難な形で所有権や取引履歴を記録できるため、デジタルアートやゲームアイテム、音楽などの真正性と価値の証明に用いられている。

※2 Web3:ブロックチェーンを基盤とした次世代インターネット構想。分散型管理や所有権の透明性を特徴とし、中央集権型のサービス構造からの脱却を目指す。デジタルアートやNFT、DAO(分散型自律組織)などの文脈で多用される。
