楽天、AIアバター「三木谷AI」が決算会見に登場 AI戦略を披露

2025年5月14日、楽天は2025年度第1四半期(1月〜3月)の決算説明会を実施した。
説明会では、同社会長の三木谷浩史氏をAIアバター化した「三木谷AI」が登場し、日本語で生成された映像と音声を駆使し、淡々と業績を報告した。
トップも従業員もAI化 楽天が示すAI活用の全社展開
今回の決算説明会では、三木谷会長本人ではなく、AIアバターの「三木谷AI」が売上や事業の進捗を解説した。
このアバターは、三木谷会長の容姿や声をAI技術で再現しており、まるで本人が話しているかのような演出がなされた。
「三木谷AI」の会見内容は事前にチェック済みであるため、三木谷会長本人の発言として認識して問題ないという。
さらに、同席したCFOの廣瀬研二氏やChief AI & Data Officer(CAIDO)のティン・ツァイ氏も同様にAIアバター化され、財務やAI戦略について語った。
楽天は同会見において、AI領域への取り組みをグループ全体の重点戦略と位置付けた。
法人向けサービス「Rakuten AI for Business」の提供開始や、大規模言語モデル「Rakuten AI 2.0」が発表され、この四半期はAI事業に注力してきたことがうかがえる。
生成AI領域でも、独自の地位確立を狙う構えであるようだ。
社内でもAIツール「Rakuten AI for Rakutenians」の導入が進められており、すでに1万3000人を超える従業員が利用中だ。この内製AI活用の強化は、グループ全体の業務効率やスピードを飛躍的に高めると期待されている。
決算説明会の説明資料では「AI大国『楽天グループ』へ」というキーワードが掲げられ、AI事業への注力が強調された。
楽天のAI会見は象徴かリスクか 「三木谷AI」が映す次なる経営と社会的課題
楽天がAIアバター「三木谷AI」を用いた決算会見を実施したことは、AI活用の象徴的なアピールであり、企業姿勢を鮮明にしたと言える。
経営トップのAI化は、形式的な報告業務の効率化を促すだけでなく、生成AIを活用した新しい企業コミュニケーションの可能性を示した点は評価できる。
一方で、AIアバターによる会見にはリスクも存在する。
最大の課題は、経営層が直接対話しないことによるリアリティや説得力の希薄化だろう。
AIによる発言は、あくまで事前に調整された情報提供にとどまり、突発的な質問への柔軟な応答や、経営者本人の情熱や姿勢が伝わりにくい側面を孕んでいる。
楽天のAIアバター活用や内製AI推進は、今後さらに広がりを見せると予測される。
特に、法人向けサービス「Rakuten AI for Business」は、同社が保有するEC、金融、通信などのビッグデータを基盤に、ユースケースを拡張していく可能性が高い。
楽天が掲げる「AI大国」構想を、過去のAIブームのように、一過性の掛け声に終わらせないためには、技術的優位性だけでなく、社会受容性や倫理面への配慮を怠らない姿勢が問われることになるだろう。