マイクロソフト、全世界で6000人の人員削減へ AI集中とコスト最適化で戦略転換加速

2025年5月13日、米マイクロソフトが全世界で約6000人の従業員削減を発表した。これは全体の約3%にあたり、急成長する人工知能(AI)事業にリソースを集中させる戦略の一環である。
成長と効率を天秤に 人員削減はAI加速への布石か
マイクロソフトは2024年6月時点で全世界に約22万8000人の従業員を抱えている。
そのうち約6000人を削減する今回の決定は、2023年1月に実施された1万人規模の削減以来の大規模な人員整理となる。削減対象は地域や部門を問わず全社的に及ぶと見られており、組織構造の簡素化と意思決定の迅速化を目指す動きと一致する。
背景には、市場環境の変化がある。
AIを中心に技術革新が加速する中、企業はかつてないスピードで最適化を迫られている。マイクロソフトも例外ではなく、柔軟かつ迅速な判断を可能にする体制構築を急いでいる。
生成AIやクラウド関連事業における競争が激化する中で、機動力を維持しつつリソースの再配分を図る必要があるという判断だ。
2025年1~3月期の決算では、生成AIを活用したクラウドサービスの需要拡大により、売上高と純利益が四半期として過去最高を記録した。だが、同時にデータセンターや専用チップなどへの巨額投資が続いており、利益を維持するにはコスト構造の見直しが避けられない状況にある。
AIシフトがもたらす成長とリスク 二律背反に向き合うマイクロソフトの行方
マイクロソフトは、今後もAI関連事業を成長ドライバーと位置付けている。
Azure上で展開されるAIサービスは既に多くの企業ユーザーを獲得しており、今後も業種横断的な導入が見込まれている。とりわけOpenAIとの連携によって提供されるCopilot機能(※)は、生産性向上ツールとして広範な注目を集めている。
一方で、AI事業への過度な集中にはリスクもある。
人員削減は短期的にはコスト圧縮に寄与するものの、社内の知見やチーム力の低下を招きかねない。また、AI市場そのものも競争が激しく、GoogleやAmazon、Metaといった競合も独自モデルの開発を進めている。
今後は技術面のみならず、倫理・法規制の面でも環境変化に迅速に対応できる体制が求められるだろう。
今回の人員整理は、変革期における経営判断として合理的ではあるが、社内外への影響は決して小さくない。人材の再配置や外部パートナーとの連携強化など、AI時代にふさわしい新たな組織戦略が鍵となるだろう。
マイクロソフトがこの大きな転換点をどう乗り切るのか、今後の動向から目が離せない。
※Copilot機能:Microsoft製品に搭載されているAIアシスタント機能で、ユーザーの業務内容を理解し、文章作成やデータ整理、分析などを支援するツール。GPT-4をベースにしたモデルが使用されている。