ダイキンが圧縮機設計の効率化へ AI-CAE「RICOS Lightning」を正式採用

RICOSは2025年5月8日、ダイキン工業が圧縮機設計の効率化を目的に、AI-CAEソリューション「RICOS Lightning」を導入したと発表した。設計シミュレーションの大幅な高速化と効率向上が期待されている。
AIでシミュレーションを高速化 圧縮機設計に革新
ダイキンは2024年からRICOSと共同で、シミュレーション高速化の検証を進めてきた。その成果を経て、今回正式に「RICOS Lightning」を導入するに至った。
RICOS Lightningは、AIとML(機械学習)を活用し、従来数日かかっていた解析処理を数分に短縮できるアプリケーションである。これにより、リアルタイムに近い設計検証が可能となり、開発スピードの向上が実現する。
特に注目されるのが、RICOS独自開発のAIアルゴリズム「IsoGCN」だ。3D空間での流れや圧力、温度などの物理量を高精度に予測し、CAE(※)の抜本的な高速化と精度向上を両立する。
IsoGCNは4つの強みを持つ。第一に従来比で大幅な計算量削減、第二に3Dデータの詳細な把握、第三に新たな形状への高い外挿予測能力、第四にメッシング作業不要という操作性の高さである。
これにより、CAE専門家のみならず設計者やデザイナーも容易に活用できる。
RICOS Lightningは既に自動車空力解析や電子部品熱解析、ガス熱流体解析などでも実績をあげている。
※CAE(Computer Aided Engineering):製品設計やエンジニアリングのプロセスにおいて、コンピュータを使ってシミュレーションや解析を行う技術の総称。
今後の展望
ダイキン工業によるAI-CAEソリューション「RICOS Lightning」の導入は、製造業における設計・開発プロセスの革新を象徴する動きである。
今後、同様のAI技術の活用が広がることで、製造業全体の競争力が強化されると考えられる。
まず、設計工程の高速化と効率化が進むことで、製品の市場投入までの期間が短縮される。企業は市場の変化に迅速に対応できるようになり、競争優位性を確保する可能性が高まる。
また、AIによるシミュレーションの精度向上により、試作回数の削減やコストの低減が期待される。これにより、製品開発におけるリスクが軽減され、資源の最適配分が可能となる。
さらに、RICOS Lightningのようなツールは、専門的な知識を持たない設計者やデザイナーでも容易に利用できるため、部門間の連携が強化され、組織全体の生産性向上につながると考えられる。
一方で、AI技術の導入には、初期投資や既存システムとの統合、データの整備などの課題も存在する。これらの課題を克服するためには、企業内での教育やトレーニングの充実、外部パートナーとの連携が重要となる。
総じて、AI-CAE技術の進展と普及は、製造業の設計・開発プロセスを根本から変革する可能性を秘めている。
ダイキン工業の取り組みは、その先駆けとして注目され、今後の業界全体の動向に大きな影響を与えると予測される。