Studioがgazを吸収合併、「第2の創業期」で目指すクリエイター支援と事業拡大の新戦略

ウェブ制作プラットフォーム「Studio」を展開するStudio株式会社が、2025年5月1日付でデザイン制作会社「gaz」を吸収合併したと、5月12日に発表した。国内企業向け事業の強化と、クリエイターを支える経済圏の拡張を目指す動きとして注目される。
400件超の制作実績を持つgazを取り込み、ユーザー支援と開発体制を強化
今回の吸収合併は、Studioにとって単なる規模の拡大ではなく、「第2の創業期」とも言える戦略的転換点だ。
Studioは、ノーコード(※)で本格的なウェブサイトが構築できるプラットフォームとして知られ、個人クリエイターから企業まで幅広い層に支持されてきた。一方、吸収対象となったgazは、同プラットフォームを活用して400件以上のサイトを手掛けてきた制作会社であり、その実績とノウハウは業界内でも高く評価されている。
Studioがgazを取り込むのは、蓄積された制作経験やデザインに強みを持つ人材を組織内に抱え込むことで、より多様なニーズに対応できる製品開発を行う狙いがあると思われる。また、ユーザーサポート体制も強化され、従来以上に手厚い支援が提供される見込みだ。
経営体制もこの合併を機に刷新された。
gazのCEOを務めていた吉岡泰之氏がStudioのCOOに就任し、国内ビジネスを統括する。一方で、StudioのCEOである石井穣氏は、今後の成長を見据え、プロダクト開発やブランド戦略、グローバル展開に専念する体制へと移行した。役割分担の明確化により、経営資源の最適配分が進むと見られている。
※ノーコード:プログラミングの知識がなくても、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)上の操作のみでアプリケーションやウェブサイトを開発できる仕組み。
ユーザーコミュニティの活性化と国内外展開が視野に、競合との差別化も鍵
この合併によって、Studioは単なるツール提供企業から、「クリエイターが活動できる経済圏を築く存在」への進化を目指している。
今後は、ユーザーコミュニティ(※)の活性化にも一層注力するとしており、イベントやオンラインサロンといった場の拡充が見込まれる。
すでに熱量の高いユーザー層を抱えるStudioにとって、これらの動きは利用者のロイヤルティを高めるとともに、プラットフォーム上での経済循環を生み出す原動力となるだろう。
市場に目を向ければ、WixやSquarespaceなどの海外勢、国産ではSTUDIOやペライチなど競合も少なくない。だが、制作実績に裏打ちされた知見を内部化し、迅速に製品へフィードバックできる体制は、他社との差別化につながるだろう。
今後、Studioは成長戦略として、教育コンテンツの強化や、企業向けソリューションの拡張を視野に入れていると思われる。
中でも期待したいのが、クリエイター向けの収益化支援や共同制作機能など、プラットフォーム上で「稼げる」仕組みの実装である。これが実現すれば、Studioが掲げる「クリエイターが安心して挑戦できる世界」の実現が現実味を帯びてくるだろう。
※ユーザーコミュニティ:ある製品やサービスを利用するユーザー同士が情報交換やコラボレーションを行う交流の場。企業にとっては製品改善やロイヤルティ向上に直結する重要な要素。