NECが顔認証×AIカメラで入退管理を革新、SSSと共同開発の新技術が始動へ

NECは2025年5月12日、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)のAIチップを搭載したカメラと自社の顔認証技術を組み合わせた入退管理ソリューションを開発し、同月から販売を開始すると発表した。
顔認証とAIチップ搭載カメラが実現する、厳環境下でも機能する次世代の入退管理
今回の新ソリューションは、従来の制限を打破する技術的革新が特徴だ。
逆光や低照度といった視認性の低い環境でも高い精度で個人を特定できるAI顔認証モデルを採用している点が、その核となる。これはNECが長年蓄積してきた画像認識技術の成果でもある。
搭載されるカメラは、リアルタイムで画質を最適化しながら顔の特徴を抽出・解析することができる。外部とのデータ通信に頼らず、現場内で完結する処理設計が、情報漏えいのリスクを大きく下げる要因となっている。
加えて、カメラ本体は手のひらサイズの小型設計であり、壁面や狭小スペースにも柔軟に設置可能だ。これにより、工場や倉庫、暗がりが多い夜間営業施設など、従来導入が困難だった場所でも活用できるようになる。
価格面でも優位性があり、1台あたり13万4000円(税別)とされ、他社同等製品と比較して約40%のコスト削減が見込める。高機能と低価格を両立させた本製品は、多くの事業者にとって導入のハードルを下げる選択肢となるだろう。
今後の導入展開と業界全体への波及、セキュリティ強化とDX加速の起点に
NECの新ソリューションは、すでに実運用に向けた準備が進んでおり、2025年10月にはセレスティン芝三井ビルディングで先行導入される予定となっている。これは、同社の実地データ収集と運用上の課題検証を目的としたもので、技術改良へのフィードバックサイクルとしても機能する見込みだ。
また、ソニーセミコンダクタソリューションズのグループ会社での利用も検討されており、社内セキュリティの高度化と業務効率の向上が期待されている。この流れは、他企業への導入促進にもつながる可能性がある。
セキュリティとプライバシーの観点でも、クラウドへの顔画像送信を行わないローカル処理型の設計は、企業コンプライアンスや個人情報保護への対応として評価されている。顧客や従業員の信頼性確保に寄与する構成であるといえる。
今後は、遠隔地での無人入退やイベント施設での短期利用、自治体による防犯インフラ強化など、多角的な展開が想定される。NECの技術は、入退管理のあり方を根本から見直す転換点になるのではないだろうか。