仮想通貨による利益相反を規制 米民主党が法案提出

米上院では民主党議員20名が共同で「仮想通貨腐敗防止法案(End Crypto Corruption Act of 2025)」を2025年5月に提出した。ドナルド・トランプ氏が発行したミームコインによる利益獲得を問題視した動きで、現政権・元政権の公職者に対する仮想通貨関連行為の制限を盛り込んでいるとみられる。
ミームコイン「TRUMP」が引き金に 政府関係者の仮想通貨活動を規制する動き
今回提出された法案では、大統領、副大統領、連邦議会議員、行政機関の高官およびその家族が、仮想通貨の発行、推奨、販売促進を行うことを禁じるというものだ。対象となる資産には、ミームコイン(※1)、ステーブルコイン(※2)、NFT(※3)などが含まれる。
一方で、仮想通貨の保有・売却・購入といった純粋な投資行為については禁止されておらず、一定の自由度は確保されているとみられる。
法案の適用は任期中および任期終了後1年間とされ、違反者には罰金や禁錮刑などの厳罰が科される可能性があるとしている。
背景には、2025年1月にトランプ氏が発行したミームコイン「TRUMP」があると思われる。
同コインは保守系支持層を中心に広がり、短期間で数百万ドル規模の利益をトランプ氏にもたらしたとの報道が出ている。
法案を支持するケリー議員はこの行為を「白昼堂々の汚職」と批判し、政府関係者によるデジタル資産活用に対し明確な歯止めが必要だと訴えた。
政府関係者の中には、イーロン・マスク氏や政府効率化局の他のメンバーも含まれる可能性がある。なお、マスク氏は最近、DOGEがドージコイン(DOGE)を公式に採用する予定はないと明言している。
可決は難しい反面、仮想通貨規制強化に向けた布石となる可能性
現時点で連邦議会下院・上院の多数派を占めているのは共和党であるため、本法案が可決される見込みは高くないと考えられる。
特に、共和党は仮想通貨に対して比較的寛容なスタンスを取る傾向があり、トランプ氏の支持基盤への配慮も影響するだろう。
ただし、この法案の提出は仮想通貨をめぐる倫理的問題に光を当てる効果を持つと考えられる。選挙戦が本格化する中で、政治的な透明性や利益相反の回避といったテーマは世論を喚起しやすいだろう。
仮に法案が否決された場合でも、将来的な仮想通貨関連の規制強化に向けた議論の端緒となる可能性がある。
デジタル資産と公職者の関与をめぐる問題は、今後も米国政治とWeb3市場の交差点として注目され続けるだろう。市場の成熟とともに、新たな規範作りが求められる局面に入ったといえそうだ。
※1 ミームコイン:インターネットミームや風刺を由来とする暗号資産。特定のユーモア性や政治的背景を持ち、実用性より話題性で取引される傾向がある。
※2 ステーブルコイン:米ドルなどの法定通貨や資産と価値を連動させた暗号資産。価格が安定しているため、決済や送金などで利用されやすい。

※3 NFT(ノン・ファンジブル・トークン):ブロックチェーン技術を活用した唯一無二のデジタル資産。アートやゲームアイテムなどに使われる。
