ブラジル・ベロオリゾンテ市、ビットコイン法案を可決 “暗号資産の首都”構想が動き出す

2025年5月7日、ブラジル南東部ミナスジェライス州の州都ベロオリゾンテ市の議会が、ビットコイン(BTC)法案を可決した。同市を「ビットコインの首都」に位置付けるプロジェクトを推進するものである。
“暗号資産の首都”構想
ベロオリゾンテ市議会は5月7日、自由党所属のヴィレ・サントス議員が提出したビットコイン法案「PL 124/25」を可決した。
投票結果は賛成20名、反対8名、棄権6名となり、暗号資産に対する前向きな姿勢が一定の支持を得ていることが示された。
現在は市長の最終承認待ちであり、承認されれば同市のデジタル化戦略が本格始動する。
この法案は、公的支出を伴わない文化的・象徴的意義を持つ施策として位置づけられ、具体的には「ビットコインの首都」構想を推進するものだ。
金融リテラシー向上を目的とした教育活動、ブロックチェーン企業の育成支援、Web3やDeFi関連の国際イベントの開催、さらには学術研究・行政サービスへのブロックチェーン導入などが柱となっている。
特に注目されるのは、これらの施策が単なる称号付与にとどまらず、都市の構造転換を視野に入れている点だ。
サントス議員は、「この取り組みにより、ベロオリゾンテ市の知名度が上がり、テクノロジー、ビジネス、金融イベントの革新的で魅力的な拠点としてのイメージが強化される」と述べており、その発言からは観光資源としての側面に加え、持続可能な経済圏の構築をも意識している姿勢がうかがえる。
また、クラウディオ・ド・ムンド・ノヴォ議員は、すでに200万人以上のビットコインユーザーを抱えるミナスジェライス州の州都に、「ビットコインの首都」という称号を与えるのは正当だと語っており、地域的な暗号資産普及率の高さが背景にあることが強調されている。
都市ブランディングとしての戦略
この法案の意義は、ブラジル国内にとどまらず、グローバルな文脈の中でも評価できる。
3月には米国のトランプ大統領がビットコインを戦略的準備資産に加える大統領令を発令し、台湾でも同様の提案が浮上するなど、国家規模でのビットコイン採用が加速している。
こうした潮流のなかでベロオリゾンテ市が象徴的な都市戦略を打ち出したことは、時流を捉えた一手と見ることができる。
一方で、実体経済へのインパクトがどこまであるかは未知数だ。
象徴的意義を前面に押し出す構想ではあるが、仮に企業誘致や国際イベント開催が不発に終わった場合、看板倒れになる懸念もある。
また、ビットコインやDeFiの不安定性を背景に、法的枠組みや市民の理解が追いつかないまま進行すれば、社会的混乱や投機の助長を招く可能性も否定できない。
しかし、この構想を実効性ある政策に転換できれば、世界に先んじて「暗号資産の都市」というイメージを根付かせることができる。
ブロックチェーンやWeb3領域はグローバルに人材・資本が流動しているが、その交差点となることは地域経済の活性化につながりうるだろう。