AIで交通誘導を自動化 岩手・金ケ崎町で県内初の本格導入が始動

2025年5月8日、建設会社タカヤは岩手県金ケ崎町内の工事現場において、AIを活用した自動交通誘導システムの本格運用を開始した。県内初の事例であり、現場の安全性向上とスムーズな交通誘導の両立を目指している。
人手不足と安全性の両立を狙う、建設業界のAI導入が加速
建設業界における慢性的な人手不足は、交通誘導員の確保にも深刻な影響を与えている。特に地方においては高齢化も進み、必要な人員を安定的に確保することが困難な状況だ。
こうした課題に対応するため、金ケ崎町西根の県道前沢北上線・川目橋の補強工事で自動交通誘導システムの導入が決定された。
本システムは、片側交互通行が必要な工事現場でAIカメラが通行車両をリアルタイムで検知し、その情報をもとにLED表示板で「進め」「止まれ」などの指示を自動で切り替える。
これにより、従来は3〜5人必要だった誘導員を1〜2人にまで削減できる見込みである。
タカヤの千葉雅司課長は、「AIが学習を重ねることで車両の流れに応じた誘導が可能になり、待ち時間の短縮につながる」と述べている。
システムは2025年6月20日まで24時間稼働を予定しており、今後のデータ蓄積によってさらに性能向上が図られる見通しだ。
ただし、現段階では交通誘導員の完全な代替は難しく、最終的な安全確認などには人間の目と判断が依然として不可欠と位置づけている。AIと人の役割を適切に併用することで、現場の安全性が維持される設計だ。
運用開始が示す今後の展望、技術導入による変化の可能性
金ケ崎町の試みは、建設現場の省人化とスマート化の可能性を示す好例といえる。
AI技術の実地導入が工事現場の実務に浸透し始めたことで、他地域や他企業への波及も加速するだろう。特に同様の課題を抱える地方都市にとって、有効なロールモデルとなり得るだろう。
交通の流れがスムーズになることで地域住民や物流業者にとってもメリットがあると考えられる。人件費の抑制や待ち時間の短縮といった定量的な効果は、継続的な運用によりさらに明確になるはずだ。
今後は、AIによる交通誘導の精度が向上することで、より複雑な道路状況や天候に柔軟に対応できるシステムへの進化が期待される。蓄積されたデータを活用すれば、時間帯ごとの交通量変化に応じた誘導や、緊急車両優先といった機能の拡充も視野に入るはずだ。
一方で、AIへの過度な依存による判断ミスやトラブル発生時のリスクもあるため、慎重な見極めが必要だ。AIによる交通誘導が新たなインフラ管理の標準手法となるかどうかは、その成果と市民からの信頼をどれだけ築けるかにかかっていると言えるだろう。