東大、社会人向けに「スマートヘルス・スクール」開講 生成AI活用で新たな健康ビジネス創出へ

東京大学は2025年5月8日、生成AIとエイジングヘルス研究を融合させた社会人向け教育プログラム「スマートヘルス・スクール」の開講を発表した。
今後の高齢社会に向けて、最新技術を活用した健康関連ビジネスモデルの創出を目指す。
生成AIと健康寿命延伸研究の融合で、実践的スキルを習得する先端プログラム
東京大学が始動させる「スマートヘルス・スクール」は、健康寿命を延ばすためのエイジングヘルス研究と、生成AIをはじめとするデジタル技術を掛け合わせ、受講者に新たなビジネス創出の力を養わせることを狙った先進的な取り組みである。
対象は大学学部卒業相当の学力を持つ社会人で、受講料は1人あたり60万円だ。
受講期間は2025年10月17日から2026年3月6日までで、講義は主に金曜夜に実施されるほか、東京大学キャンパスでの1泊2日の実地講義も3回予定されている。
講義内容には、細胞老化の制御法やエイジングの数理モデル、スマートセンシングの基礎に加え、Google日本法人のヘルスケアテクノロジー責任者による生成AIを活用した講義が含まれる。
これにより、受講者は理論と実践の両面からエイジング分野の知見を獲得し、デジタル技術を活用した事業立案やプロジェクト構築の能力を高めていくことができる見込みだ。
本プログラムでは、生成AIの導入における実務的な応用例を通して、技術をビジネスに活かす具体的手法を学べる点が注目に値する。
大学発イノベーションが拓く「健康×テクノロジー」新時代 生成AI活用で社会実装を加速
生成AIやセンシング技術の進化により、ヘルスケア領域のビジネス化は加速する見込みだ。
そうした中、東京大学が打ち出した今回のプログラムは、研究成果を社会実装へと転換するプロセスのモデルケースになり得るだろう。
同様の動きは国内外の一部大学にも見られるが、エイジングという特定の課題に生成AIを本格的に融合させた取り組みは珍しい。
従来の医学・福祉領域に留まらず、ウェルビーイング、デジタルヘルス、ライフスタイル産業との連携も視野に入れた内容となっており、多業種への波及効果も期待される。
プログラム修了後、受講者が実際にどのようなプロジェクトやビジネスモデルを生み出すかが鍵になると思われるが、早期段階での成果例や体験談が共有されれば、さらなる受講希望者や企業連携の動きが活発化する可能性も高い。
今後は、他大学や研究機関との連携強化に加え、地域社会や企業との共同開発を通じた、教育の枠を超えた実証的な取り組みへと発展することが期待される。
一方で、技術への過度な依存を避け、倫理やプライバシーへの配慮、人間中心のサービス設計といった観点が、持続的かつ信頼性の高い展開には不可欠である。
デジタル時代の“健康づくり”をリードする人材育成の新たな潮流が、本格的に始まろうとしているのではないだろうか。