IBMとLumenが新たな協業を発表 エッジAIで企業のリアルタイム意思決定を加速へ

米Lumen Technologiesと米IBMは2025年5月6日(現地時間)、エッジコンピューティング(※)領域での協業を発表した。IBMのAI基盤「watsonx」とLumenのエッジインフラを統合し、リアルタイムでの企業向けAI処理を実現する体制を構築するという。
Lumenの高速エッジとIBMのwatsonxが統合 各業界でのAI導入が加速か
Lumen TechnologiesとIBMは、エンタープライズグレードのAIソリューションをエッジ環境で実現するための協業を発表した。
IBMのAIプラットフォーム「watsonx」と、Lumenの低遅延・高スループットなエッジクラウド基盤を組み合わせることで、生成されたデータの近くでAIを即時に活用できる体制を構築するという。
この協業の中核となるのが、Lumenのマルチクラウド対応エッジインフラと、IBMのAI推論エンジンだ。これらを組み合わせ、企業が自社内で生成した大量のデータを即時に解析可能な仕組みを提供する。
対象業界は、金融サービス、医療、製造、小売など多岐にわたり、特にリアルタイムでの処理が求められる現場での活用が見込まれている。
また、Lumenのエッジネットワークは5ミリ秒以下のレイテンシーを実現しており、主要なクラウドや企業拠点とダイレクトに接続可能だとされる。
これにより、データの移動に伴うタイムラグやパブリッククラウドへの依存コストを大幅に削減できると考えられている。
さらに、IBM Consultingが導入支援を担当することで、業界や領域に応じたカスタマイズが可能になり、スケーラビリティとコスト効率の両立を実現する支援体制も整備される。
※エッジコンピューティング:データを生成した現場(エッジ)に近い場所で処理を行う技術。クラウドに比べて遅延が少なく、リアルタイム性に優れる。
企業が受けるメリットと今後の広がり
今回の協業は、AIの導入が大企業の一部に限られていたこれまでの状況を変える可能性を持つ。従来、AI活用には膨大な計算資源とクラウド利用料が必要であったが、Lumenのエッジインフラによって運用コストを抑えながら、リアルタイムでの高度な処理が可能になる。
実際に、LumenとIBMは大手小売業者向けにAIによるデジタルアシスタントや在庫システムの視覚検査ツールを提供しており、顧客体験の革新に取り組んでいる。
これが実用段階に入れば、個別の購買履歴や在庫情報をもとにしたパーソナライズドな接客が可能となり、購買体験の質が劇的に向上する見通しだ。
加えて、エッジAIの普及により、規制やセキュリティの観点からデータを外部に出しにくい業界でもAIの導入が進むとみられる。ローカルでの処理によって、情報漏洩リスクを最小限に抑えつつ、高度な分析を行うことができるようになるためだ。
AIの民主化とコスト最適化は、今後のデジタルビジネスにおいて極めて重要なテーマとなりそうだ。