KDDIとNEC、サイバーセキュリティで協業検討 AI活用で日本最大の体制構築へ

2025年5月8日、KDDIとNECは、サイバーセキュリティ事業における協業の検討を開始する基本合意書を締結したことを発表した。日本国内における最大規模の体制構築を目指し、AIによる脅威分析やグローバルな監視体制の強化に取り組む方針だ。
AIとインテリジェンスを核に、日本最大のセキュリティ体制を構築
KDDIとNECはそれぞれの強みを持ち寄り、専門人材の数および売上規模において「日本最大」のサイバーセキュリティ事業を目指すとしている。
協業の核となるのは、AI技術を活用した高度な脅威分析である。
KDDIおよびKDDI傘下のラックの「JSOC」「サイバー119」と、NECおよびNEC子会社のNECセキュリティが収集している脅威情報を、両社が保有する知見や自社開発のAI技術を活用し分析することで、脅威の検知・対処を行う「AI×インテリジェンス駆動型サイバーセキュリティ」の展開を予定している。
この手法により、政府機関や民間企業に対して迅速かつ的確な防御策を展開できるようになる見通しだ。
また、グローバルなセキュリティ運用センター(SOC)の強化も本協業の柱の一つだ。
ラックとNECのシンガポールでの協業で培った運用監視ノウハウ、KDDIのグローバルデータセンター事業「Telehouse」、NECの政府向けITシステムおよびセキュリティの実績を組み合わせ、グローバルなセキュリティ運用監視体制を構築する。
本協業のビジネス展開においては、ブランドの確立も重視されている。
KDDIは「WAKONX(ワコンエックス)」、NECは「BluStellar(ブルーステラ)」という名称で、それぞれのサイバーセキュリティサービスを展開する予定だ。
WAKONX×BluStellarが描く次世代セキュリティの未来像
今回の基本合意は、2025年以降に本格化するAI時代のセキュリティ基盤構築の布石として注目に値する。政府による経済安全保障の推進、インフラ事業者へのセキュリティ義務化といった政策的な後押しもあり、両社の動きは官民連携型のモデルケースとして拡大していく見通しだ。
今後は、WAKONXとBluStellarを軸に、クラウド環境やIoT分野にまでセキュリティ網を拡大させる展開が予想される。また、グローバル展開という点では、シンガポールや米国での運用実績を活かし、アジア太平洋地域を中心にセキュリティサービスの輸出も視野に入る可能性がある。
ただし、真に効果的な体制とするには、国内外のセキュリティ専門人材の確保・育成が急務になる。AI技術に依存するだけでなく、人的な知見や対応力をどこまで補強できるかが、今後の成否を左右すると考えられる。
全体として、今回の協業は日本のサイバーセキュリティ水準を一段階引き上げる起爆剤となり得るが、社会全体でその体制をどう支え、柔軟に進化させていくかが問われる局面に入っている。