ソニーセミコン子会社ミドクラジャパン、NVIDIA最新チップ搭載GPUサーバーを国内で取り扱い開始

2025年5月7日、ソニーセミコンダクタソリューションズの子会社ミドクラジャパンは、NVIDIAの最先端GPU「HGX B200」を搭載したSupermicro製GPUサーバーの国内受注を開始すると発表した。
国内AI開発現場のニーズに応える高速調達体制と高性能構成が注目を集めている。
高性能GPUサーバーが最短2週間で手元に届く
これまで、日本国内におけるハイエンドGPUサーバーの調達には、発注から納品まで数カ月を要するのが常だった。
とくにNVIDIA製GPUはAI開発における業界標準でありながら、その需給逼迫により迅速な導入が困難な状況が続いていた。
この状況を打破すべく、ソニーセミコンの子会社ミドクラジャパンは、HASHCAT JAPANとの連携によって、GPUサーバーの国内調達にかかる期間を受注後約2週間にまで短縮する供給体制を構築した。
これにより、国内企業や研究機関にとって、AIプロジェクトの立ち上げスピードが格段に向上する可能性がある。
今回提供されるサーバーは、Supermicro製の筐体にNVIDIAの最新GPUであるHGX B200(※1)を8基搭載した構成だ。
大規模な画像解析やディープラーニング向けの演算処理を想定しており、GPUの増設、メモリ容量の拡張、ネットワーク構成の変更なども柔軟に対応可能とされている。
さらに、GPUクラスター構築支援やAI開発環境の整備、用途特化型のAIモデルもオプションで提供される。
サーバーの提供に加え、ミドクラジャパンは2025年7月より新たに「ビジョンAIファンデーションモデル(※2)」の提供をオプションとして開始する計画だ。
画像や動画のリアルタイム解析に対応する大規模AIモデル群で、第一弾として「属性付き人物検知」「車両検出およびナンバープレート認識」「コンテナID検出および認識」の三種のAIモデルが展開される見込みである。
新サーバー提供の利点と今後の市場展望
新サーバー提供の利点は、従来は数ヶ月を要した調達期間が劇的に短縮されたことで、スタートアップから大規模研究機関まで、AIプロジェクトの立ち上げや実証実験が迅速に行えるようになることだろう。
またGPUクラスター構築支援やAIファンデーションモデルの提供といった“ソフト面”での支援も視野に入れていることが特徴で、より包括的なサービス展開を目指していることがうかがえる。
他方で、クラウド型AIサービスとの競合は今後さらに激化すると考えられる。
AWSやGoogle Cloudなどは、オンデマンドでのリソース提供とスケーラビリティを武器としており、オンプレミス型GPUサーバーの需要がどこまで拡大・持続するかは見通しが分かれる。
特にセキュリティやレイテンシ要件を理由にオンプレミスを選ぶ層に限られるとすれば、提供側も“AIソリューションベンダー”としての統合力が鍵になっていくだろう。
※1 HGX B200:NVIDIAが2024年末に発表した高性能GPUプラットフォーム。大規模AI学習に特化した設計で、膨大なパラメータをリアルタイムで処理可能。従来比で性能あたりの電力効率も向上している。
※2 ファンデーションモデル:多用途に応用可能な大規模AIモデルのこと。事前学習された汎用知識を持ち、特定用途への微調整(ファインチューニング)により迅速な実用化が可能とされる。