Netflixの生成AI活用、パーソナライズで視聴体験の機能強化

米Netflixは2025年5月7日(現地時間)、テレビ画面のデザイン刷新およびモバイルアプリの機能強化を発表した。OpenAIの生成AI技術を応用することで、より直感的かつパーソナライズされた視聴体験の提供を目指す。
新デザインと生成AIがもたらす、テレビ画面の新しいUX
Netflixは、テレビ画面のデザインを大幅に刷新すると発表した。それに伴い、レコメンド機能が使えるようになる見込みだ。
視聴履歴、他のユーザーの嗜好、ジャンル情報、端末の使用傾向、視聴時間帯、言語設定といった複合的なデータをもとに、Netflix独自のアルゴリズム処理でパーソナライズが行われる。
今回、このレコメンド機能の精度を高める目的で、OpenAIが提供する生成AIをNetflixが自社用にカスタマイズしたモデルが導入される。これは既存のアルゴリズムの拡張であり、Netflixのチームによってトレーニングされる。
また、テレビに続き、モバイルアプリでもNetflixの生成AI活用が進行中だ。
iOS版アプリでは、「何か面白くて元気になれる映画を探してる」といった自然な言葉での検索が可能となる。従来のキーワード検索と異なり、ユーザーの意図に基づいて柔軟に作品を提示できる点が最大の特長である。
生成AI活用によるNetflixの展望
Netflixが発表した生成AIの導入は、ストリーミング業界における次世代体験の兆しと見ることができる。特に、自然言語検索は、ユーザー行動の多様化に応える形で開発されていると考えられる。
このアプローチが成功した場合、ユーザーの視聴時間と満足度の向上につながる可能性が高く、Netflixにとってはリテンション(離脱防止)施策としても機能しうるだろう。
ただし、これらの革新には懸念点も存在する。
生成AIによる推薦がユーザーの嗜好を過度に先読みすることで、多様な作品への接触機会が損なわれるリスクがある。
いわゆる「フィルターバブル」や「過剰パーソナライズ」によって、予測可能なコンテンツばかりが提示される環境が構築されるおそれがある。さらに、自然言語による検索が便利である反面、ユーザーの発話のあいまいさや多義性にどこまで対応できるかが問われるだろう。
総じて、Netflixの今回の動きはストリーミングのUXを根本から再構築する試みであり、他社プラットフォームの技術革新にも波及効果をもたらす起点となるかもしれない。
だが、ユーザーの実際の使用感や文化圏ごとの文脈への配慮が不十分になれば、逆に没入感を損なう可能性もある。
テクノロジーとユーザー体験のバランスがどこまで取れるかが重要となるだろう。