LINEヤフー、横断型AIで「AIパーソナルエージェント」構想を発表

2024年5月7日、LINEヤフー株式会社は2024年度通期および第4四半期決算の発表会を開き、「AIパーソナルエージェント」の開発に注力する方針を明らかにした。
ユーザーの要望に応じて自律的に複数のタスクを実行する次世代AIの構築を目指しており、100を超える自社サービスのAI機能を横断的に強化する計画だ。
階層構造でタスクを処理するパーソナルエージェント
LINEヤフーが発表した「AIパーソナルエージェント」は、階層構造を持つAIシステムで構成される。
上位の「ドメインエージェント」がコマースなどの特定分野を統括し、その下で「ファンクショナルエージェント」が在庫確認やレビュー収集など具体的な処理を担当する設計となっており、連携してタスクに取り組むという。
ドメインエージェントの中には、買い物支援に特化したコマースエージェントという実装例もある。
たとえば、ロボット掃除機を探すユーザーに対しては、価格変動を監視し、購入に最適なタイミングで通知を行ったり、ユーザーの趣向を踏まえた最適な製品をレコメンドしたり、複数製品を比較したカタログの自動生成を行ったりするという。
LINEヤフーはAIによる社内業務の最適化にも取り組んでおり、今後3年間で生産性を2倍に引き上げる目標を掲げている。
生産性を高めることで、AIエージェントの開発に必要なリソースの確保を図る考えだ。
さらに、2025年度にはLINE公式アカウントやミニアプリ、そしてPayPay事業への投資も拡大する予定であり、AI戦略が中核に据えられていることがうかがえる。
横断型AIエージェントのメリットとリスク
LINEヤフーは、単一のアプリや機能にAIを導入するだけではなく、100以上に及ぶ各種サービスを横断的に連携させることで、より横断的で自律的なAIエージェントを実現させようとしている。AIによるネットワークを形成し、より幅広いユーザーニーズに対応できるようにする計画だ。
これにより、ユーザーは複数アプリを行き来せずとも、一つのインターフェースを通じて生活全般の支援を受けられる可能性がある。
一方で、サービス間のデータ統合には高度なセキュリティ設計と同意取得のプロセスが不可欠であり、ユーザープライバシーに対する懸念は常に伴うことになるだろう。
とりわけ横断型AIは、ユーザーの行動履歴や購買履歴、位置情報などの統合解析を前提とするため、情報の利活用に対する社会的合意形成が問われることになる。
とはいえ、LINEヤフーはすでにLINE、PayPay、Yahoo!といった主要サービスを日常的に利用するユーザー層を獲得しているため、AIエージェントの実装は初期から一定の社会浸透が見込まれる。
横断的なAI機能を実装できれば、ユーザー経験は大幅に向上するだろう。