UAE、幼稚園からAI教育を全学年で導入へ 来年度より公立校で本格始動

2025年5月4日、アラブ首長国連邦(UAE)は、来年度からすべての年齢層の児童を対象に人工知能(AI)の授業を導入すると発表した。ドバイ首長ムハンマド・ビン・ラシド・マクトム氏によるこの決定は、世界的に見ても先進的なAI教育政策である。
幼稚園から対象、AI教育を推進
今回の発表は、UAEがこれまで進めてきたAI主導の国家戦略を教育分野にも本格的に拡張する動きだ。
マクトム首相は、X(旧ツイッター)への投稿で「私たちの目標は、子どもたちが技術的観点からAIを深く理解すると同時に、この新しい技術に関する倫理的意識を育むことにある」と述べ、未来を生き抜くためのリテラシーとしてのAI教育の重要性を強調した。
対象となるのは、UAE国内のすべての公立学校であり、幼稚園児からAI教育を受けることになる。これは世界的にも稀な試みであり、通常は中等教育以降に限定されがちなAI学習を、早期から国家的に推進するという意味で画期的な政策といえる。
世界初のAI担当大臣任命から8年、教育分野への拡張で国際競争力を強化か
UAEがAIに注力し始めたのは2017年にさかのぼる。この年、同国は世界で初めてAI担当大臣を任命し、国としてAI分野への本格参入を表明した。
また、首都アブダビにはAI専門の大学「Mohamed bin Zayed University of Artificial Intelligence(MBZUAI)」(※)が設立されており、研究・産業・政策の三位一体での成長を狙ってきた。
今回のAI授業の導入は、そうした基盤の上に築かれたものであり、教育面でも“AI国家”としてのブランド力を固める動きと読み取れる。
国際的には、アメリカや中国がAI教育において先行しているものの、UAEのように幼稚園段階から体系的なカリキュラムを組み入れる例はほとんど見られない。
今後は、AI教育を受けた世代が起業や政策立案の現場に進出することにより、国内の技術イノベーションが加速する可能性がある。特に、AIを正しく理解した上で活用できる人材が増えることは、国際競争力の源泉となるはずだ。
※MBZUAI:世界初のAIに特化した大学で、大学院レベルの研究と教育に特化している。