マイクロソフト、イーロン・マスク氏のAI「Grok」を導入へ

2025年5月1日、マイクロソフトがイーロン・マスク氏のAI企業xAIが開発した対話型生成AIモデル「Grok(グロック)」を、自社のクラウドプラットフォーム「Azure AI Foundry」でホスティングする計画を進めていると報じられた。
この動きは、OpenAIとの関係に新たな緊張をもたらす可能性がある。
OpenAIとの複雑な関係を抱えつつ、Grok導入でクラウドAI戦略を強化へ
関係者の話によると、マイクロソフトはxAIとの間で、Grokを自社の開発者支援プラットフォーム「Azure AI Foundry(※)」で提供するための協議を進行中だ。
これが実現すれば、マイクロソフトの顧客企業や開発者が、Grokを活用したアプリケーション構築を迅速に行える環境が整うとみられている。
注目すべきは、マイクロソフトが既にOpenAIと深いパートナーシップを結んでいる点である。
OpenAIの「ChatGPT」やGPTシリーズの多くは、Azureを通じて提供されており、その中核技術を支えるのもマイクロソフトのインフラだ。
しかし、OpenAIの共同創業者であるマスク氏は2018年に経営から離れ、現在はライバル的な立ち位置にあるxAIを率いている。
この状況下でGrokを採用する動きは、OpenAIとマイクロソフトの関係に微妙な影響を与える可能性もある。
現時点では、マイクロソフトがGrokの導入にあたってxAIと独占契約を締結するかどうかは明らかになっていない。
他のクラウド事業者、たとえばアマゾンなども、Grokの採用に関心を示すことが想定される中、Grokの提供範囲が広がるのか、それともAzure限定となるのかは今後の注目点となりそうだ。
※Azure AI Foundry:マイクロソフトが提供する開発者向けのAI構築・運用プラットフォーム。複数のAIモデルを比較・選択し、実装・拡張する機能を提供しており、Grokなどの外部モデル統合も想定されている。
今後の展望
今後、GrokのAzure導入が実現すれば、マイクロソフトはAI開発者および法人向けの選択肢を一層広げることになるだろう。
特に、GrokはX(旧Twitter)を活用した大規模なリアルタイムデータを活用しており、時事的な知識やネット文化に強いため、OpenAIのGPT系と異なるこの設計が、利用者にとって補完的な意味を持つ可能性がある。
市場全体を見ると、AIモデルの多様化が加速しており、クラウドプラットフォーム各社は他社との差別化を図るべく、独自性あるAIモデルとの提携を急いでいる。
GoogleはGemini、アマゾンはAnthropicとの連携を進めており、マイクロソフトのGrok採用もこの流れに沿った動きと解釈できる。
Grokの導入が成功すれば、マイクロソフトはAzureの競争力を一段と高めることができるだろう。
一方で、OpenAIとの力関係や契約構造に影響を及ぼすリスクも伴うと思われる。
AI戦略を巡る複数パートナーとのバランス調整が、今後のマイクロソフトの重要課題となりそうだ。