米MGXのバイナンス投資に「USD1」採用 トロン統合で拡張目指す新ステーブルコイン戦略

2025年4月30日から5月1日にかけてドバイで開催された『Token2049』にて、アブダビの投資会社MGXが、暗号資産取引所バイナンス(Binance)に対して行う20億ドルの投資に、ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)のステーブルコイン「USD1」が決済手段として採用されたことが発表された。
透明性と規制順守を打ち出す「USD1」、バイナンス決済で存在感を示す
今回採用されたUSD1は、米ドルと連動するステーブルコインであり、その裏付け資産として短期国債および現金同等物が用いられている。
こうした構造により、価格の安定性と高い透明性が担保され、利用者にとって信頼できる決済手段として設計されている。
WLFIは、金融と暗号資産の橋渡しを目指す新興企業で、特に法的な整合性と実用性の両立を重視しており、本件はその理念を実証する初の大規模事例となる。
決済先であるバイナンスは、世界最大級の暗号資産取引所であり、今回の採用はUSD1が国際的なステーブルコインとして認知され始めている証左とも言える。
エリック・トランプ氏は、「USD1は消費者の安全を最優先に設計された通貨であり、今後も透明性を重視した運営を継続する」と述べた。
発表と同時に明らかにされたのが、USD1とブロックチェーン基盤「トロン(Tron)」エコシステムとの統合だ。
トロンは、効率的なトランザクション処理と高いスケーラビリティを特徴とする分散型プラットフォームである。
また、トロンは億万長者ジャスティン・サン氏の支援もあることから、USD1は技術的にも資本的にも強固な基盤を手にした格好だ。
実経済との接続を目指すUSD1、次世代通貨インフラへの挑戦と課題
WLFIの共同創設者ザック・ウィトコフ氏は、今後USD1をDeFiおよびCeFi双方の主要通貨として確立する方針を示した。
加えて、小売業界におけるPOSシステムとの統合も視野に入れており、リアル経済での利用拡大を通じてステーブルコインの実用性を高める構想である。
こうした動きは、単なるデジタル決済手段にとどまらず、暗号資産の社会実装を加速させる可能性を秘めている。
一方で、懸念点も存在する。
まず、WLFI自体が新興プレイヤーであるため、万が一のガバナンス不全や資産裏付けに関する不透明性が将来的な信用リスクにつながる可能性がある。
USD1は、単なるステーブルコインの枠を超え、実経済との接続を意識した「次世代通貨インフラ」としての進化を目指していると考えられる。
ただし、実現には規制との整合性が不可欠であり、特に欧州や米国など主要国での承認・対応状況が鍵となる。
今後、USD1が規制順守を前提とした運営姿勢を貫けるかどうかが、グローバルな採用拡大の成否を左右するだろう。