ふくおかFGとエクサウィザーズが業務提携 AIエージェント活用で次世代の銀行モデルを模索

2025年5月1日、AIスタートアップのエクサウィザーズは、日本のふくおかフィナンシャルグループ(FG)との業務提携を発表した。
AIエージェントを中核とした新たな銀行モデルの創出を目指し、業務効率化と地域企業への展開を視野に入れた取り組みが本格化している。
AIエージェントで業務変革へ
ふくおかFGは、地域に根ざした大手金融グループとして、デジタル技術の導入による業務革新を模索してきた。
今回の提携では、AIエージェントによる業務効率化にとどまらず、将来的な内製化までを視野に入れた体制づくりが進行中だ。
導入される主な技術としては、エクサウィザーズが提供する「exaBase Studio」が挙げられる。これは、AIエージェント開発に特化したノーコード開発基盤であり、短期間でのプロトタイプ作成が可能である。
また、「RAG Ops」と呼ばれる検索拡張生成テンプレートも併用され、ふくおかFGの業務データを活用したユースケースへの対応力を高めている。これにより、90%超の業務パターンに対してAIエージェントの活用が見込まれているという。
さらに注目すべきは、同グループ内のエンジニアがAIエージェントを自ら開発・運用する方向性である。
これは、外注依存を脱し、コスト効率と対応スピードの両立を図る取り組みであり、実務現場での柔軟な対応を可能にする体制の構築と捉えられる。
AIを用いた業務変革は、システム導入そのもの以上に運用体制の構築が重要であり、この点でふくおかFGの姿勢は先進的だと言える。
本提携のもう一つの軸となるのが、両社のエンジニアによる共同研究開発である。AI技術の業務適用は、実装後の効果検証と改善サイクルが極めて重要であり、現場の知見と技術的知識の融合が求められる。
金融業界におけるAI実装と今後の展望
今後の展望としては、行内業務へのAIエージェントの本格的な導入が進み、業務効率化や人手不足の緩和が現場レベルで実感される段階に移行することが想定される。
従来の画一的な業務プロセスが見直され、顧客対応やリスク管理といった多様な業務に柔軟に適応する新たなオペレーションモデルが生まれる可能性がある。
一方で、今回の取り組みが地域企業にも展開される構想がある点は、極めて重要である。
銀行内での導入実績が可視化されれば、自治体や中小企業などに向けたAIソリューションの提供機会が広がり、地方におけるデジタル変革の触媒となることが期待される。
特にRAG Opsのような業務知識を活かす仕組みは、業種を問わず応用可能であるため、AIの導入障壁を下げる効果も持つと考えられる。
中長期的には、こうした動きが他の地域金融機関にも波及し、日本の金融インフラ全体がより柔軟かつ効率的な構造へと進化する契機になるのではないだろうか。
AIエージェントの成果指標やガバナンス体制の整備は課題になると思われるが、ふくおかFGのような先進事例が業界全体の指針となる可能性が高いだろう。