国内AIシステム市場、2029年には4兆円超え IDC Japanが予測発表

2025年5月1日、IDC Japanは国内AIシステム市場の最新予測を発表した。
2024年は「AIエージェント時代の幕開け」と位置づけられ、AIシステムの市場規模は前年比56.5%増の1兆3412億円に拡大。2029年には4兆円を超える見通しであり、生成AIとAIエージェントの進化がこの急成長をけん引している。

生成AIの実装とAIエージェントの進化が市場拡大を促進

2024年に入ってから、日本国内におけるAIシステム市場は大きな転換期を迎えている。
IDC Japanによれば、同年の市場規模は1兆3412億円とされ、前年から実に56.5%の成長を記録した。
2024年から2029年にかけては、年平均成長率25.6%で拡大が続く見通しであり、最終的には4兆1873億円に達すると予測されている。

この背景には、生成AIの普及が大きく影響している。2024年は、コンテンツ作成支援やドキュメントの要約、プログラミング支援といった「生産性ユースケース」が企業の業務ソフトウェアに本格的に組み込まれ始めた年であり、AIの活用範囲が急速に広がっている。

また、AIアシスタントからAIエージェントへの進化も市場成長を後押ししている。
特に、大規模言語モデル（LLM）の技術的進展がこの変化を支えており、対話理解や意思決定支援といった高度なタスクが実現可能になってきた。

これにより、データ管理機能や統合開発環境を備えた「AIエージェントビルダー」の登場が加速している。
ソフトウェアベンダー各社も、こうしたツールを活用してAIエージェントの実装支援を強化しており、企業の導入ハードルを引き下げる動きが進んでいる。

激化する競争と今後の展望

生成AIの活用が広がる一方で、AIベンダー間の競争も激しさを増している。

IDC Japanの分析によれば、特に価格競争が顕著になっており、従来型の包括的なAIソリューションだけでは差別化が難しくなっている。
こうした中、特定業種や業務プロセスに特化したAIソリューションを提供するベンダーが注目を集め始めている。
医療、製造、教育など、それぞれの業界特有の課題に対して最適化されたAIエージェントの提供は、エコシステムの活性化と顧客ロイヤルティの向上に寄与すると考えられる。

IDC Japanのリサーチディレクターである松本聡氏は、「AIエージェント時代を迎え、ベンダーはエコシステムにおける自らの役割や優位性を明確化し、市場環境の変化に対応することが重要である」と指摘している。

つまり、単なるツール提供にとどまらず、運用支援や戦略的コンサルティングといった高付加価値サービスの提供が、今後の競争力に直結するという見方だ。

今後、AIエージェントが企業の業務改革やビジネスモデルの変革にどのように寄与するのかが注目される。
市場の急拡大は確実視されているが、その恩恵を受けられるかどうかは、企業自身の判断と対応次第だと言えるだろう。