「銀行は暗号資産を導入しなければ10年以内に絶滅する」 トランプ大統領の子息エリック氏が米金融業界に警鐘

現地時間2025年4月30日、ドナルド・トランプ大統領の息子であるエリック・トランプ氏が、ブロックチェーン技術の採用を怠れば、銀行は10年以内に消え去るだろうと警告した。CNBCの番組でのインタビューで発言したものだ。
ブロックチェーン未導入の銀行は「時代遅れ」になると警告
トランプ・オーガナイゼーションのエグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めるエリック・トランプ氏が、米経済メディアCNBCのインタビューにおいて、現代の金融システムがもはや持続可能ではないとの見解を示した。
彼は「現代の金融システムは壊れており、スピードは遅く、コストは高い」と明言し、国際決済ネットワークであるSWIFTに関しては「まったくもって最悪だ」と強く批判した。
現在の金融システムの代わりに、銀行間での送金や決済をブロックチェーン(※)技術によって置き換えることで、即時かつ低コストな送金を可能にすべきという主張だ。
エリック氏は、「暗号資産アプリを使えばウォレット間で瞬時に送金できる。手数料も為替変動もなく、透明性もある」と語った。
こうした発言の背景には、銀行システムが超富裕層を優遇し、中間層以下の人々を不利な立場に追い込んでいるというエリック氏の認識がある。
彼は「銀行システムは、莫大な資産を持たない人々や、『アメリカを再び偉大に』(トランプ氏のスローガン)と書かれた赤い帽子をかぶった人々を敵と見なしている」とし、金融の民主化を目指すブロックチェーン技術の可能性を強調した。
実際、米国の主要銀行の一部はすでにブロックチェーン導入に向けた動きを見せている。
特にJPモルガンは自社独自のブロックチェーンネットワーク「Onyx」を展開し、国際決済や資産管理の効率化に取り組んでいる。
金融界の一部では、もはやブロックチェーンは実験段階ではなく、実運用へと移行しているという見方も広がっている。
※ブロックチェーン:分散型台帳技術の一種。複数のコンピューターで同じ取引履歴を共有・保存することで、不正の防止や高い信頼性を実現する仕組み。
フィンテック新興勢との競争激化
エリック・トランプ氏は、これまでも弟のドナルド・トランプ・ジュニア氏とともにステーブルコイン「USD1」などの暗号資産プロジェクトに関与しており、自身の立場を金融改革の推進者と位置付けている。
5月にトロントで開催予定の暗号資産カンファレンス「Consensus 2025」でも登壇が予定されており、ブロックチェーン業界との関係は深い。
ただ、エリック氏自身がステーブルコイン「USD1」などの暗号資産事業に関与しているという事実は、彼の主張に利害関係が含まれていることを示しているとも言える。
自身のビジネスへの誘導としての側面を持つ発言であるならば、公共的提言としての中立性には疑問が残るため、慎重な評価が必要になるだろう。
とはいえ、エリック・トランプ氏のようなブロックチェーン推進派の登場は、アメリカの金融界における権力の構図が変わりつつあることの兆候とも言える。
とりわけ、旧来型の金融機関に対して、テクノロジー企業や富裕層が自らの道を切り拓こうとする動きは、今後さらに活発になると予測される。