トランプ政権、欧州にAI規則の実践規範撤回を求め圧力　企業負担懸念で対立激化

2025年4月25日、米トランプ政権が欧州連合（EU）に対し、人工知能（AI）規則の実践規範を撤回するよう圧力をかけているとブルームバーグが報じた。

これは、欧州域内で進むAI規制強化に対し、米国側が企業の自由な活動を守ろうとする動きの一環であり、国際的な摩擦が顕在化している。

米国、欧州のAI規制強化に対抗　企業競争力低下を懸念

2024年に成立したEUのAI規則は、急速に進化するAI技術を倫理的かつ安全に利用することを目的として策定された。開発者には、透明性の確保やリスク管理、著作権保護に至るまで、厳格な基準が課せられる。
これに対し、トランプ政権は規制緩和を基本方針とし、特にテクノロジー分野では企業活動の自由を重視する立場をとってきた。

今回問題となっているのは、EUが最終取りまとめを進めている「実践規範」である。規範は自主的な枠組みと位置付けられているが、遵守しなかった場合には年間売上高の最大7%という巨額の制裁金を科される可能性がある。
このため、規範自体が事実上の義務となり、AI規則以上に企業に負担を強いるとの批判が出ている。

米国駐EU代表部は、欧州委員会に書簡を送付し、実践規範の採用が企業競争力を損ない、国際市場における不公平を生みかねないと強く懸念を表明したという。具体的には、実践規範の見直し、あるいは採用撤回を求める内容であり、米国企業が不利な立場に置かれることを未然に防ぎたい意図がにじむ。 

今後の展望

現状、AI規則は2024年にEUで成立したばかりであり、実践規範についても最終的なとりまとめが進行中である。
米国が圧力を強めることで、欧州委員会側が規範内容の一部緩和を検討する余地は残されているものの、EUが安全性と倫理を重視するスタンスを大きく転換する可能性は低いと見られる。

今後は、AI規則を巡る国際的な緊張が一層高まるだろう。
EUが独自路線を貫けば、米国企業との間で規則適用を巡る摩擦が増え、最悪の場合、EU市場向けのAI開発から撤退する動きも出てくるかもしれない。
逆に、EUの規則が世界標準となる可能性も否定できず、その場合、米国企業も対応を余儀なくされる展開があり得る。
いずれにしても、AI技術のグローバルな競争と規制のバランスを巡る駆け引きは、当面続く見通しである。