三菱UFJ銀行、データブリックスでAI基盤刷新 3万人の生産性向上を狙う

2025年4月25日、三菱UFJ銀行は次期AI共通基盤として米データブリックスの「データ・インテリジェンス・プラットフォーム」を採用したと発表した。
社内に点在していたAIモデル開発環境を統合し、従業員約3万人の生産性向上とデータドリブン経営の実現を目指す。
AI共通基盤にデータブリックスを採用、全社的な業務効率化を推進
三菱UFJ銀行が進める中期経営計画には「企業変革の加速」があり、データドリブン経営による競争力強化が据えられている。
その一環として、次期AI共通基盤にデータブリックスの「データ・インテリジェンス・プラットフォーム」が採用された。
これまで部門ごとに個別運用されていたAI開発環境を統合し、社内のデータ活用レベルを飛躍的に引き上げる狙いだ。
新基盤は、データの処理・分析からAIモデル、さらにはAIエージェントシステムの開発までを一貫して支援する。
これにより、従業員の業務プロセスにAIを組み込み、不正検知やリスク管理の高度化、業務効率化、マーケティング活動の精緻化、新たなビジネスモデル創出が期待される。
ガバナンス面でも、データブリックスは金融機関に求められる厳格なセキュリティ基準やコンプライアンス要件を満たしており、安全なデータ活用基盤を提供する。
顧客情報の保護を強化しつつ、先進的なAI活用を加速できる体制が整う見通しだ。
生産性向上と業界波及効果、金融DXを牽引する可能性
今回の取り組みは、三菱UFJ銀行内部での業務効率化にとどまらず、銀行業界全体への波及効果も見込まれる。
約3万人の従業員がAI活用によって業務を自動化・効率化できる環境が整えば、顧客への対応スピードやサービスの質が向上し、結果として顧客生涯価値(LTV)(※)の最大化につながると考えられる。
さらに、生成AIによるデータ分析機能も強化されるため、従来は手間と時間を要していたリスク管理や不正検知業務も、よりリアルタイムかつ精緻なものになる可能性が高い。
この変革が成功すれば、他行も同様のAI基盤刷新を迫られる場面が増えるだろう。
ただし、データ活用の高度化には新たなリスクも伴う可能性がある。
AIに依存した意思決定プロセスの透明性確保や、万一の誤作動リスクへの備えなど、今後の運用設計が重要となるだろう。
三菱UFJ銀行の取り組みは、金融DXの先導モデルとなる一方で、慎重な運用設計と継続的なガバナンス強化が不可欠であると言えそうだ。
※顧客生涯価値(LTV):「Lifetime Value」の略。ある顧客が取引開始から終了までにもたらす総利益を指す。企業戦略では顧客満足度向上とリピート率向上を通じてLTV最大化を目指す。