デル、15万円を切るAI搭載ノートPCを国内発表 初心者層に向けた戦略的価格設定が話題に

2025年4月23日、デル・テクノロジーズは日本国内で「Dell Plus」ブランドの新型AIノートパソコン3モデルを発表した。
AMDの最新AIプラットフォームを搭載しながらも、最安モデルが税込14万9000円と15万円を下回る価格を実現。高価格帯が主流だったAI PC市場に一石を投じている。
高性能×低価格を実現したAI PC
デル・テクノロジーズが今回投入したのは、14インチのクラムシェル型、同じく14インチでタッチ操作に対応した2-in-1型、そして16インチのクラムシェル型という3つのノートパソコン。
いずれもAMDの「Ryzen AI 300」プラットフォームを搭載しており、AI処理に特化した専用のNPU(ニューラル・プロセッサ・ユニット※)を内蔵する。
今回、デルが特にこだわったのが価格だ。
中でも14インチクラムシェル型の最廉価モデルは税込14万9000円と、15万円を切る価格で提供される。
これまでAI搭載PCは高価格帯に位置づけられていたが、デルはこのハードルを一気に引き下げた。
ジャパンコンシューマー&リテール部門の松原大氏は「Dell Plusとしてはかなり踏み込んだ金額」と語り、エントリーユーザー層への普及を狙った戦略であることを示唆する。
Ryzen AI 300のNPUは、1秒間に50兆回という演算処理性能(50TOPS)を誇る。
これは業界最高水準にあたり、クラウドを介さずローカルでAI処理を行うため、応答速度やバッテリー効率に優れているという。
日本AMDの関路子副社長は「クラウドAIよりも処理スピード、バッテリー寿命ともに優れる」としており、実用性の高さがうかがえる。
※NPU(ニューラル・プロセッサ・ユニット):
AIの処理に特化した専用プロセッサ。画像認識や自然言語処理といった高度な演算をローカルで迅速に行う能力を持つ。
AI PCの大衆化が加速するか
AI搭載パソコンの市場は急成長が見込まれている一方で、これまで価格の高さが普及の妨げとなっていた。
今回のデルの新製品は、AI活用を日常レベルにまで引き下げる試金石ともなり得る。
また、画像生成AIや文字起こしツール、リアルタイム翻訳など、クラウドでは遅延が生じやすかったタスクが、NPUの搭載によってローカルで快適に処理できるようになるだろう。
一方で、パソコン初心者であるエントリーユーザーが、NPUをどれだけ必要とするか、またその必要性をどれだけ認識できるかは、まだ不透明だ。
AI PCとして、分かりやすくその魅力を初心者に説明できるかどうかは今後の課題になるだろう。6月には量販店での販売も予定されており、触れて試せる機会が増えることは普及を後押しする要素になりうるだろう。
今後「Dell Plus」ブランドがIntel系、AMD系双方で製品ラインを広げていけば、ユーザーの選択肢はより多様になるはずだ。
AI PCの大衆化が現実味を帯びてきた現在、クラウド依存からの脱却を図る動きに伴い、PCの価値基準を塗り替えていくのかもしれない。