FENNEL、SUPER FORMULA主催のJRPと提携 eスポーツとモータースポーツが交差する新時代へ

2025年4月19日、日本のeスポーツチーム「FENNEL」が、国内最高峰のフォーミュラレース「SUPER FORMULA」を主催する日本レースプロモーション(JRP)と提携することを発表した。
本提携は、eスポーツとモータースポーツ双方の可能性を拡張し、新たな産業文化の創出を目指す国内プロジェクトである。
FENNEL、e-Motorsports部門を新設 JRPとの戦略的提携により3領域横断の成長モデルへ
FENNELとJRPによる提携は、単なるeスポーツチームとモータースポーツ団体の協業に留まらない。
FENNELは、2025年4月にe-Motorsports部門を新設した。その中心選手としてSUPER FORMULAで活躍する大湯都史樹選手を迎え入れた。これは、実在のモータースポーツと仮想空間における競技領域が本格的に融合する象徴的な一手だ。
この提携により、eスポーツ、eモータースポーツ(※)、リアルモータースポーツという三領域が互いに補完し合いながら発展する、新たな成長モデルの構築が狙われている。特にJRPは、モータースポーツの伝統と実績を背景に、eモータースポーツへの接続点を求めてきた。
一方FENNELは、若年層に強い支持を持つeスポーツの拠点として、リアル競技との融合を推進してきた。
今回の協業は、そうした両者の思惑が一致した結果であり、スポーツ業界に新たな「文化圏」と「経済圏」をもたらす可能性を秘めている。FENNELとJRPは、スポンサーシップの多様化や産業人材の循環を中長期的な価値創出の軸とし、単なるイベントコラボを超えた構造的変革を視野に入れているものと思われる。
※eモータースポーツ:実際のレースと同様の車両挙動を再現したシミュレーターを使い、オンライン上で競技する次世代型のスポーツ。レースゲームとプロスポーツの中間領域に位置する。
雇用創出と顧客接点の再構築 新時代のエンタメ産業が描く「出会いの場」戦略
FENNELとJRPは、提携の第一段階として「就職フェア」や「合同企業説明会」(※)の開催を計画している。これは、モータースポーツおよび自動車関連産業において、eモータースポーツを媒介とした人材流動の仕組みを形成するための取り組みだろう。
ゲームで親しんだ若者たちが、eモータースポーツというリアリティを経て、実社会でのキャリアに接続する設計は、従来のスポーツ業界には見られなかった革新性を帯びているのではないだろうか。
企業にとっては、新たな顧客層や潜在的な人材との出会いが可能になり、学生や若年層にとっても、従来の「モータースポーツ=一部の専門職」というイメージが覆されるだろう。
特にWeb3やAI、バーチャルリアリティの進化に伴い、スポーツ観戦や体験のあり方も変化しており、eモータースポーツはそれを体現する存在として注目されている。
FENNELは今後、e-Motorsportsを中心とした新規コンテンツの拡充を進める見通しであり、リアルとデジタルの境界を越えるプラットフォーム化を視野に入れている。この動きは、スポーツマーケティングだけでなく、教育、人材育成、地域活性といった複数の文脈でも波及効果をもたらすだろう。
※合同企業説明会:複数の企業が一堂に会して行う採用説明イベント。学生は短時間で複数の企業と接点を持てるメリットがある。近年ではオンライン開催や業界特化型も増加傾向にある。