Sparがビットコイン決済を導入、LN活用で実店舗決済の新たなモデルに

2025年4月16日、スイスの大手スーパーマーケットチェーン「Spar」が、ツーク州の一部店舗においてビットコイン決済を正式導入したと発表した。ライトニングネットワーク(LN)を活用することで即時支払いを実現し、仮想通貨による実店舗決済の新たなモデルとなっている。
Sparが先陣を切ったビットコイン決済導入の背景と仕組み
1932年に創業したスイスの「Spar」は、2024年時点で世界48カ国に約13,900店舗を展開し、スイス国内では266店舗を構える大手スーパーマーケットチェーンである。
1日あたり約1,470万人の顧客にサービスを提供する同社が今回、新たに導入したのがビットコインによる即時決済システムだ。
この取り組みは、スイスの仮想通貨先進地域として知られるツーク州の店舗でスタートした。
同州は「クリプトバレー」として数多くのブロックチェーン企業が集積する拠点であり、自治体レベルでビットコインやイーサリアムによる税金支払いも認められている。このような環境下での導入は、極めて自然な流れとも言える。
Sparが導入したのは、DFX Swissが提供する決済ソリューション「OpenCryptoPay」だ。顧客はレジで提示されたQRコードをスマートフォンでスキャンし、ビットコインを送金できる。店舗側はそれを自動的にスイスフランで受け取る仕組みであり、価格変動リスクは生じない。
この決済にはライトニングネットワーク(LN)が活用されている。これはビットコインのスケーラビリティ問題を解決するためのオフチェーン(※)技術で、取引の迅速化と手数料削減を可能にする。
従来、実店舗におけるビットコイン決済は遅延やコストの問題が課題とされてきたが、LNの活用によりそれが解消され、日常的な少額決済にも対応できるようになった。
※オフチェーン:ブロックチェーン本体の外でトランザクションを処理する方式。ネットワークの混雑回避と高速化が期待される。
仮想通貨普及の起点となるか 市場への波及と今後の可能性
今回のSparの動きは、単なる一企業の先進的な試みにとどまらず、スイス全体における仮想通貨普及の起点となる可能性を孕んでいる。
ビットコイン協会スイスの理事であるラヒム・タギザデガン氏は、「十分な数のユーザーが利便性を実感すれば、全国展開の可能性は十分にある」と述べており、市場としての注目度は高い。
すでにスイスでは自治体による税金支払いへの対応、金融機関による仮想通貨サービスの拡充など、制度とインフラの整備が着実に進んでいる。そこにSparのような生活に密着したリテール企業が参加することは、仮想通貨の“実需”を伴う普及の大きな一歩となるだろう。
一方で、価格変動の激しいビットコインを日常決済に用いることへの懸念は依然として存在する。今後は、ユーザー体験の向上や利便性の周知が重要な鍵となるだろう。
仮に今回の導入が成功すれば、他のスーパーマーケットや小売業者にも波及し、スイスが“仮想通貨先進国”としてさらに一歩進むことになるはずだ。スイス発のこの実証モデルが、欧州や日本を含む他国へのロールモデルとなるか、今後の動向に注目が集まる。