ブラジル暗号資産詐欺、主要被告3名に懲役171年と規制強化へ

2025年4月18日、ブラジルの裁判所は、暗号資産を悪用した巨額詐欺事件「Braiscompany」に関与した主要被告3名に対し、合計171年の懲役刑を言い渡したと報道された。本件は約2万人から総額270億円超を集めたピラミッド型スキームで、暗号資産業界における規制強化の必要性を示唆している。
ピラミッド型スキームの構造と判決の重さ
Braiscompanyは、暗号資産取引を装いながら、実態は典型的なポンジ・スキーム(※)だった。
新規投資家から得た資金を既存の出資者への「配当」として支払い、あたかも安定した利益が出ているかのように偽装していた。だが実際には運用実態が存在せず、スキームは持続可能なビジネスモデルではなかった。
首謀者とされるジョエル・フェレイラ・デ・ソウザ(Joel Ferreira de Souza)は、無認可の金融機関を複数設立し、資金洗浄(マネーロンダリング)を繰り返していたとされる。その手口は巧妙で、国内外の口座を利用して資金の流れを複雑化させていた。裁判所はこの行為を重く見て、彼に対し懲役128年を言い渡した。
共犯者のゲサナ・ラヤネ・シルバは現金の取り扱いと仲介を担当し、ビクター・ヴェロネズは資金の管理や投資家との連絡を担っていた。それぞれ27年と15年の刑が科された。なお、他の2人の関係者については証拠不十分で無罪となったが、検察は再審を示唆している。
裁判所は被告らの資産のうち、3600万レアル(約7億円相当)を差し押さえる決定を下した。しかし、被害者への返金がどこまで実現可能かは未確定であり、多くの投資家が損失回復の見通しを持てていないのが現状である。
※ポンジ・スキーム:新たな出資金を使って既存の投資家に配当を支払う詐欺手法。実態のない運用で永続性がなく、最後には崩壊する構造。
暗号資産規制と投資家リテラシーの強化が急務に
この事件が示したのは、暗号資産の自由度が高い一方で、規制の不備が詐欺の温床となり得る現実である。ブラジルでは暗号資産関連の監視体制が徐々に整いつつあるが、依然として民間主導のビジネスが野放しになっている状況も多く、政府には規制強化が求められている。
また、国際的な協力が進むことで、他国の事例を参考にした効果的な規制が導入されることが期待される。特に、詐欺行為に対する取り締まりが強化されることで、暗号資産市場の信頼性が向上するだろう。
一方で、投資家リテラシーの向上も重要な課題である。高利回りを謳う投資案件に対する警戒心を持つことが求められ、教育プログラムの充実が必要だと考えられる。これにより、投資家自身がリスクを理解し、適切な判断を下せるようになることが望ましい。
事件が大きく報道されたことで高まった社会的関心を受け、ブラジル政府がどこまで迅速かつ実効性のある法整備を進めるかは注目される。今後の立法措置が、市場の透明性を高め、不正を防止することで業界の信頼性向上に繋がる可能性もあるだろう。
規制強化と投資家教育の両輪が機能することで、暗号資産市場がより安全で持続可能なものへと進化することを期待したい。