富士通・Supermicro・ニデックが協業 データセンター冷却電力を大幅削減へ

2024年4月17日、富士通、Super Micro Computer(Supermicro)、ニデックの3社が、データセンターの冷却電力削減に向けた協業を発表した。AIの普及で高まる電力需要に対し、水冷技術を軸とした省エネ型インフラの実現を目指す。
AI時代のインフラ再構築 冷却効率で差がつくデータセンター戦略
AI技術の急速な普及により、データセンターへの依存度が日々高まっている。とりわけ生成AIや大規模言語モデルの運用では、高性能なGPUサーバーが必要不可欠であり、その結果として発熱量の増大が課題として浮上している。
これに対応するために、多くの施設が空冷方式を採用しているが、その電力使用効率(PUE ※)は平均1.6とされており、効率面では十分とは言いがたい。
こうした中で、注目されているのが水冷方式である。PUEが平均1.2まで低下することが実証されており、省エネ効果は顕著だ。
ただし、導入には冷却水の制御や配管設計に関する専門知識が不可欠であり、導入のハードルは依然として高い。
この障壁を乗り越えるため、富士通は40年にわたる水冷技術とソフトウェア開発力を組み合わせ、リアルタイム監視可能な新システムを開発中である。
今回の協業では、Supermicroが水冷を前提とした高密度・高性能なAIサーバーシステムを提供し、ニデックは高効率な冷却システムの供給を担当する。
3社が補完し合う形での連携により、従来の冷却方式の課題を抜本的に解消することが狙いだ。
館林にある富士通のデータセンターにおいて効果検証が実施される予定であり、2025年度第4四半期までに世界トップクラスのPUE達成を目指す。
※PUE(Power Usage Effectiveness):データセンター全体の消費電力のうち、IT機器以外(冷却や照明など)に使われる割合を示す指標。1.0に近いほど効率が高いとされる。
水冷インフラは新常識となるか 進む最適化と拡張性への布石
この協業がもたらす最大の意義は、省エネ性能の追求だけにとどまらない。水冷システムは高密度なサーバー配置を可能にし、今後のAI需要拡大にも柔軟に対応できる構造を提供する。
これにより、スペースの有効活用や保守性の向上といった副次的メリットも期待されている。
また、富士通が進めるリアルタイム監視ソフトウェアは、稼働状況に応じた動的な冷却制御を可能にし、無駄な電力消費を防ぐ。
こうしたスマート制御は、エネルギー管理の最適化だけでなく、予測メンテナンスやトラブル防止にも貢献することになるだろう。企業にとっては、運用コスト削減と持続可能性の両立が図れるという点で導入メリットは大きい。
一方で、初期導入コストや技術者不足といった課題も残されており、広範な普及には一定の時間がかかると見られる。
それでも今回のように業界大手が旗振り役を担うことで、技術の標準化と導入支援が進み、環境負荷の少ない次世代データセンター構築の動きが加速する可能性は高い。
持続可能なIT基盤を求める声が高まる中、今回の協業はその重要な一歩となる。