NTTデータ、AIエージェントでIT人材の暗黙知を活用 高度知の継承に新アプローチ

2025年4月16日、NTTデータ先端技術が、IT人材の暗黙知を活用するAIエージェントを開発し、同グループのプロフェッショナルサービス「まかせいのう」へ提供することを発表した。
国内のIT業界が直面する知識継承と人材不足という課題に対し、AIを用いた革新的な対応が動き出した形だ。
IT人材不足とナレッジ継承の壁を超えるAIエージェントの可能性
デジタルトランスフォーメーションの急拡大により、企業におけるIT利活用の需要は年々高まっている。特に日本では、労働人口の減少に伴い、高度なスキルを有するIT人材の確保が大きな課題となっている。
こうした背景のもと、技術者の経験則や直感といった「暗黙知」の重要性が再認識されてきたが、その継承は属人的かつ断片的なケースが多く、知識の有効活用が進んでいない現実があった。
今回NTTデータ先端技術が発表したAIエージェントは、プロフェッショナルサービスである「まかせいのう」を通じて蓄積されたノウハウや業務知見を統合し、検索・活用可能な形で提供する。
このAIは、社内ドキュメントやQ&A、過去の相談履歴など多岐にわたる非構造情報を統合的に処理し、ユーザーが求める回答や示唆を提示することが目的だ。
これにより、「まかせいのう」のコンサルタントが、専門家からのサポートを受けているかのような環境を実現し、自律的な問題解決力向上を目指す。
AIエージェントの導入によって、これまで個人の経験や記憶に依存していたナレッジが形式知として再構成され、活用が加速すると見られる。
知識の伝達が滑らかになれば、組織の生産性向上にも直結する可能性が高い。
「知を引き出すAI」がもたらす人材育成の変革と将来的展望
このAIエージェントが持つ最大の意義は、知識を「保管する」のではなく「活用する」仕組みを提供する点にある。
経験者の知見を自動的に呼び出し、現場で直面する課題への仮説や方針提示を補助することで、新人や中堅のコンサルタントも、より自律的に判断を下せるようになり、属人的だった技術継承のスタイルを大きく変える可能性があるだろう。
今後は、「まかせいのう」だけでなく、NTTデータグループが展開する他のプロフェッショナルサービスへの水平展開も視野に入るとみられる。
AIエージェントは固定された機能にとどまらず、導入企業のニーズに応じて継続的な学習や改善が可能な設計となっているため、より多様な業務領域へと展開することが可能だ。
一方で、AIが提供する知見の信頼性や、現場との温度差が課題として残る可能性も否定できない。
過去の知見に基づいた提案が常に最善とは限らず、技術革新のスピードが速い業界では、定期的なアップデートが必須となるだろう。
それでも、形式知のストックだけに頼らず、リアルタイムな知識の流通を促すこのアプローチは、IT人材育成の新たな方法を提案するものだと言える。
他の企業でも知識伝達にAIが使用される可能性があり、開発技術と使う側のリテラシーが問われることになるだろう。