介護スタッフをAIが支援 盛岡市で先進的高齢者施設が5月に開業

2025年5月1日、岩手県盛岡市に最新のAI活用型高齢者施設「リハビリホームボンセジュール菜園」が開設される。
ベネッセグループが運営する本施設では、介護スタッフを支援するAIシステムを導入し、入居者のQOL(※1)向上と現場の業務負担軽減を目指す取り組みが始まる。
AIが介護現場の“目”と“頭脳”に 高齢者ケアに革新
盛岡市中心部に誕生する「リハビリホームボンセジュール菜園」は、介護業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)(※2)を象徴する施設として注目を集めている。
運営するベネッセグループは、2025年5月1日のオープンを前に、介護とテクノロジーの融合によって、高齢者ケアの質的向上と業務効率化を図る方針を示した。
本施設では、AIが入居者の健康状態や精神状態をスコア化し、蓄積されたベテラン介護士の知識を基に、現場スタッフへ的確な助言を行う仕組みを導入する。
これにより、スタッフは状況判断にかかる負担を軽減できるほか、経験の浅い職員のスキル向上にもつながる。
さらに、AIは作業の一部自動化にも対応しており、理学療法士や看護師との連携を通じて、ケアの精度とスピードを両立する狙いがある。
入居者に対しては、機械浴の導入や個別のリハビリプログラムを提供し、自立支援を重視した生活支援が行われる予定だ。
全71部屋を備えた本施設は、1人部屋と2人部屋を用意し、最大収容人数は86人とされる。車いす利用者の利便性にも配慮された設計で、高齢者の尊厳を守りながら安全な日常を提供する体制が整っている。
DXが進む介護業界 新たなビジネスモデルの試金石に
日本の介護業界は、深刻な人手不足に直面しており、現場では限られたリソースで質の高いサービスを維持するための試行錯誤が続いている。そうした背景を考えると、AIを取り入れた新たなケアモデルを創出することは非常に有効だろう。
本施設は、そうしたニーズに応える実証の場にもなりうる。
導入されるAIは、単なる補助ツールにとどまらず、意思決定支援や教育機能をも担うことで、業界全体の知見を共有・拡張する基盤となる可能性を秘めている。
これは介護現場における“属人化”の問題に対処する手段としても有効であり、質のばらつきを減らす効果も期待できる。
一方で、費用面では入居一時金が約180万円から最大3000万円と幅広く、加えて月額利用料が必要となる。この価格帯が地域住民にとって現実的かどうかは今後の注目点だ。
今後、AIの学習精度向上とシステムの汎用化が進めば、同様の施設が全国各地に拡大する可能性がある。盛岡市の事例は、介護とAIの融合が本格的に社会実装へと進む節目となるだろう。
※1 QOL(クオリティ・オブ・ライフ)とは、「生活の質」の意味。医療・介護分野では、身体的・精神的・社会的な側面を含め、個人がどれだけ満足のいく生活を送れているかを示す指標。
※2 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、IT技術を活用してビジネスや社会の仕組みを根本的に変革するプロセスのこと。介護業界では業務効率化やサービスの質向上を目的として導入が進んでいる。
ベネッセの有料老人ホーム 『リハビリホームボンセジュール菜園』 施設概要
https://kaigo.benesse-style-care.co.jp/area_iwate/morioka/home_b-saien