ネットフリックス、新AI検索エンジンを試験運用開始 気分に寄り添った作品選びを可能に

2025年4月14日、米動画配信大手ネットフリックスが、AIを活用した新たな検索エンジンの試験運用を始めていることが、ブルーグバーグの報道により明らかになった。
ユーザーの気分に寄り添う“対話型検索”で、作品探索がより直感的に
ネットフリックスが導入した新しいAI検索技術は、従来の検索とは一線を画すアプローチを採用している。
ユーザーが「ワクワクする映画を探している」「感動したい気分」といった気分を直接言語化することで、それにマッチしたコンテンツ候補を提示する仕組みだ。
基盤技術にはOpenAIの自然言語処理能力が応用されており、会話的な入力にも対応可能とされる。
オーストラリアとニュージーランドの一部ユーザーは既にこの機能を使用でき、現在はiOSを搭載したデバイスに限定して提供されているとのことだ。
今後、米国など複数の地域にも段階的に展開する方針が示されている。
これまでのネットフリックスにおけるAI活用は、主に視聴履歴に基づいた推薦アルゴリズムが中心だった。視聴傾向の解析によってレコメンド精度を高める一方で、ユーザーがその時々で感じている感情までは汲み取れなかった。
今回の新機能は、よりリアルタイムかつ主観的なニーズに対応する検索体験を実現する狙いがあるとみられる。
AIは「道具」であり「代替」ではない 創造性を尊重する企業姿勢
このように検索体験を刷新するネットフリックスだが、AIによる創造的プロセスへの関与には慎重な姿勢を見せている。
同社の共同CEOであるテッド・サランドスは、「AIは映画製作の質を高める上で貢献し得るが、クリエイティブな才能の代わりになるものではない」と明言しており、AIの役割はあくまで人間の補完に留まるとの立場をとっている。
コンテンツ制作からユーザー体験まで、AIの導入は今や映像業界全体に広がりつつある。
ただし、万能なツールとして過信せず、人間の創造性との共存を模索するバランス感覚が企業に求められている。
ネットフリックスの今回の取り組みは、こうしたテクノロジーと人間中心主義の融合を象徴する事例とも言える。
今後、AI検索技術の精度や対応言語、ユーザーインターフェースの進化によって、コンテンツ探索の手段はさらに多様化するだろう。
加えて、AIが得意とするパターン認識や言語理解を応用することで、ユーザーにとっての「気分に合った作品との出会い」が日常的なものになる可能性もある。
動画配信の体験価値が再定義されるフェーズが、今まさに始まっている。