都立学校16万人に生成AI環境を整備へ コニカミノルタが東京都の業務委託を受託

2025年4月16日、コニカミノルタジャパン株式会社が東京都教育庁との契約に基づき、都立学校の約16万人に生成AIを提供する体制を構築すると発表した。
教育現場におけるAI活用が本格的に加速する見通しだ。
GPT-4o miniレベルのAIを都立全校へ展開、安全性と教育支援機能を両立
今回の契約は、2024年度に研究校として指定された20校で導入された生成AIの環境を、全都立学校に拡大する内容である。
対象は教職員と児童生徒約16万人にのぼる。
OpenAIのGPT-4o mini相当以上のAIを使用でき、専用のセキュアな環境で運用される点が特徴だ。
ユーザーの入力データが学習モデルに再利用されない構成となっており、教育現場のプライバシー確保やリスク回避にも配慮されている。
教員と生徒にはアカウントが付与され、教員は生成AIの関連データをアップロードでき、教科ごとに独自のプロンプトを共有・蓄積できるライブラリ機能も搭載される。
本件の受託企業であるコニカミノルタは、2019年から教育支援サービス「tomoLinks」を提供しており、対話型AI「チャッともシンク」を軸に探究学習や協働学習の支援に注力してきた。
サービスはフィルタリング機能や履歴管理機能を備え、安全性にも一定の実績がある。
生成AIの導入は、教員の業務負荷軽減と、生徒ごとの理解度に応じた学習支援の実現に寄与すると期待される。
東京都の教育DX政策においても、今後の中核的な施策の一つと位置づけられている。
「AIと共に学ぶ教育」への転換点 個別最適化とリテラシー教育の両立がカギに
本取り組みは、都立学校における生成AI活用の「標準モデル」づくりとして注目される可能性が高い。
2024年度に導入された研究校での実証結果を踏まえ、段階的に拡張されていることから、東京都教育庁は中長期的にこのモデルを高度化・全国波及させることを視野に入れていると考えられる。
今後、学習履歴の可視化やAIとのインタラクション履歴の分析を通じた“学びの個別最適化”がより進化する可能性が高い。
また、生成AIが持つ言語処理能力を活かし、多言語対応や特別支援教育分野への応用も期待されている。
とくに日本語に加え、英語や他言語での表現補助、読解支援機能などは、グローバル人材育成やインクルーシブ教育の推進と相性が良い領域だと考えられる。
ただし、制度面での整備は依然として課題が残るだろう。
生成AIを教育活動の中核に据えるには、AIとの適切な付き合い方を教える「AIリテラシー教育」自体の整備が不可欠である。
また、AIによるバイアスや誤情報のリスクに対する教員・生徒双方の批判的思考力育成も同時並行で進めなければ、技術の恩恵が裏目に出る可能性もある。
教育の現場は、単なるAIツールの利用者にとどまるのではなく、「AIと共に考える力」を育む場として再定義されるべき段階にあるだろう。
今回の導入は、その転換点の一歩になると捉えられるのではないだろうか。