JASRAC楽曲管理システムのブロックチェーン基盤をソニーSoneiumへ移行

2025年4月15日、日本音楽著作権協会(JASRAC)は、楽曲情報管理システム「KENDRIX」のブロックチェーン基盤を、ソニーグループが開発したイーサリアムレイヤー2「Soneium(ソニューム)」へ正式に移行すると発表した。
KENDRIXがSoneiumを選んだ理由は「信頼性」と「効率性」の向上
今回の移行は、JASRACが音楽クリエイターに対して提供する著作権管理環境の安全性と透明性を高めることを目的としている。
KENDRIXは楽曲の存在証明とクリエイター本人確認をオンラインで完結させるシステムだが、プライベートブロックチェーン上で運用されていた。
この仕組みでは改ざん防止や透明性に限界があった。
そこで白羽の矢が立ったのが、ソニーグループが開発したSoneiumだ。
Soneiumはイーサリアムレイヤー2ソリューション(※)であり、ブロックチェーンの耐改ざん性と処理効率を両立する特徴を備えている。これにより、楽曲データの信頼性確保だけでなく、登録や証明作業の負荷も軽減される見込みだ。
さらにSoneium基盤への移行後は、クリエイターが制作した楽曲の権利情報をファンや企業が確認しやすくなるため、作品流通の加速も期待されている。
※イーサリアムレイヤー2ソリューション:
ブロックチェーン「イーサリアム」の処理速度やコストを改善するために設計された補助的ネットワーク。データは最終的にイーサリアムに記録され、安全性と効率性を両立する仕組み。
クリエイターとファンがつながる新時代へ、JASRACの展望
KENDRIXの移行は単なるシステム刷新ではなく、音楽業界全体の仕組みに変化を促す布石とも言える。
KENDRIXはプロ・アマを問わず誰でも無料で利用できる点が特徴で、楽曲の存在証明だけでなく、ファンとのエンゲージメントを強化する役割も担う。
今後は、ブロックチェーン上に記録された楽曲情報をもとに、クリエイターとリスナーが直接結びつく新たなエコシステムが形成される可能性もあるだろう。
一方、既存ユーザーには2025年9月30日までに新規約への同意が求められ、対応しない場合は証明データが削除される。この締切が意味するのは、音楽著作権管理が「自己責任」のフェーズに入ったという現実だ。
JASRACは今後もSoneiumの基盤を活用することで、より広範囲かつ柔軟な著作権流通ネットワークの構築を目指していくと思われる。
Web3時代にふさわしい音楽流通の新たな形が、すでに動き出しているようだ。