図書館もAI時代へ 富山県内初、魚津市で「対話型検索」実証スタート

2025年4月15日、富山県魚津市は、人工知能(AI)を活用した図書検索システムを市立図書館に試験導入したと発表した。利用者が言葉で本を探せる仕組みで、県内公立図書館では初の導入となる。
AIで本探しが対話に 魚津市が挑む図書館の機能拡張
「こんなテーマの本、ありますか?」といった曖昧な問いにもAIが応答する図書検索システムが、魚津市立図書館に試験導入された。
このシステムでは、利用者が読みたい本の内容やジャンルを入力することで、AIが関連書籍を即座に提案する。
約30万冊に及ぶ蔵書を対象に、多様な切り口で推薦が可能な仕組みとなっており、従来のキーワード検索とは一線を画している。検索結果は複数表示されるため、利用者自身が選択肢を持ちながら読書体験を深めることができる。
ユーザーが司書に聞きづらい場合にも気軽に検索できることに加え、AIの活用によって職員の業務負担を軽減し、より本質的な業務に時間を割けるようになるという狙いもある。
今回のシステム導入は、昨年度までの3年間、市地域活性化起業人で市ICT・デジタル推進アドバイザーを務めたソフトバンクの召田雄三氏の提案により実現したもので、技術と公共サービスの接点を模索する一例と言える。
試験運用は5月7日まで続けられ、本格導入が検討される見通しである。
AIが変える図書館体験 広がる公共施設デジタル化の波
魚津市の取り組みは、単なる技術導入にとどまらず、公共施設におけるユーザー体験の再定義につながる可能性を持つ。
人に尋ねづらい内容や、ふとした興味からの探索をAIが代行することで、図書館という空間の役割はより開かれたものへと変容していくだろう。
また、このような検索体験は、若年層やデジタルネイティブ世代にも親和性が高い。
チャット型のインターフェースはスマートフォン操作に慣れた利用者にとって自然な導線であり、図書館の敷居を下げる効果も期待されている。
加えて、検索結果がパーソナライズされていく仕組みが今後実装されれば、読書体験そのものが深化する可能性すらある。
今回のシステムが成功を収めれば、他自治体の図書館でも同様の導入が進むだろう。
公立図書館という一見保守的な場にも、デジタルイノベーションが確実に浸透し始めている。
利用者の声を起点にしたサービス設計が注目される今、今回のAI導入は、その象徴的なケースとして業界関係者の関心を集めている。今後の展開から目が離せない。